リュート・エーザキ
旧アステア語で龍斗 英崎と書く。
先日、ドゥーム地方へと遠征した妻をゴルボルーニュの核兵器により不運にも失った。
それから怒りを覚え、グレンガーを倒し、この世を正す計画を考案した。

その為に仲間と共に研究施設に侵入し兵器を奪って逃走した人物である。



臆病な少年




数日後、施設に乗り込んだアステア人は無事に自分達の国に戻ってきた。

このアステア人達はアズマノ地方に位置するシズクオカ町の住人である。

ある日の事、父親が息子に声をかけた。
「アーザ、ちょっと来てくれるか?」

「なあに?父さん?」

父親は息子を連れ小さな廃墟へ向かった。

中に入り
古錆びた薄暗い廊下を二人は歩いて行く。

「お父さん?ここどこ…?」

「ごめんな。アーザ。」
父は謝るだけでそれ以外何も話してくれなかった。

「え?どうして謝るの?」


アーザが尋ねると、父は突然布でアーザの口元を覆った。

抵抗できないままアーザは眠りについた。

「アーザ君どうですか?」

「ひとまずは睡眠薬で眠っている。手術室まで運ぶか。」

「何もここで寝かせなくても良かったんじゃ…」

「何かを感じとって逃げられるよりマシだろう。」


眠っているアーザはそのまま手術室へ運ばれ、そのまま更に全身麻酔を投与された。


アーザは右腕から胸にかけて切開され骨と平行になるように兵器を入れられる。

その後、切り口を縫い付け、兵器を起動させる。
アーザは眠っていたが痛そうに顔を歪め悶絶していた。

「すまない…アーザ…」

いくら全身麻酔をしても兵器はアーザの体内で起動し膨大な熱とエネルギーを放つ。痛みを感じない訳が無い。


数時間後、無事手術が終了し、兵器の作動も収まった。
アーザは身体が安らいだのか
麻酔が切れた後も起きる事なく、眠りについたままだった。

そして昏睡状態のアーザの目が覚めたのは2日後。

アーザが手術から生存した事から、不本意ながらリステン考案の人体兵器の実用に初めて成功したと言う事となる。


「リュートさん、アーザ君が目を覚ましましたよ。」

「起きたか。アーザ、身体は大丈夫か?何か違和感は感じないか?」

「父さん…なんか右手が…と言うより身体の右半分が重い感じがする…。僕に何をしたの?」

「よく聞け。今お前の身体の中には強い力を持ったKTA-22という兵器が入っている。」

「え?どう言うこと?兵器?なんで?」

「アーザ…。お前には本当に悪いと思っている…。でもお前しかいないんだ。この世の中を変えるのは。父さんはお前に未来を託したんだ。」
父は兵器移植に一番適していたのはアーザだと説明。
そしてグレンガーの暴動を止めなければ、更に被害が生まれる事も伝えた。


「ついこの間、核爆弾が西方のドゥーム地方に落ちた事は知ってるよな?母さんを殺したあの核爆弾だ。」

「うん…知ってる。あれは戦争で戦ってたルシアノが核爆弾を落と「違う。世間ではそう言っているが実際あれは戦争に関係無いゴルボルーニュが落として来たんだ。」

「え…?どうして…?」

「それは両国の戦争を止める為だ。確かにその影響で戦争は止まりはした。核爆弾はあの敵のルシアノ国にも落とされ互いに戦意喪失し戦争は終…、いや、正確には休戦状態となっただけでまだ終わっていない。だがこのまま続けばゴルボルーニュがまた何処かに核兵器を落としてくるだろう。」

「だけど、そんな終わり方しても…」

「その通りだ。それで戦争は終わってもその後の問題は山積みだ。民間人は戦争での死亡者よりも核兵器での死亡者の方が多くなり、爆心地である町の再建の費用も莫大。それなら戦争でそのまま終戦になった方がまだ良いだろう。だからアーザ、お前には戦って欲しい。あの国の大統領、グレンガーと。この世界を変えられるのはお前だけだ。その為の手術だったんだ。母さんの為にも…!」

父は息子に全ての想いを伝えた。

だがアーザは
「嫌だ…嫌だよ!どうして急に、どうして僕一人がそんな事しなきゃいけないんだよ…」

「すまないなアーザ…今は無理でも構わない…すぐにとは言わないから自信が付いたら父さんに言ってくれ。」

父は部屋を去る。

部屋にはアーザと父の部下のエーナガが残された。

「どうして…僕が…そんなことを…」
アーザは泣き出してしまった。


「アーザ君の気持ちも分かるよ。でもお父さんの気持ちも分かってあげてほしい。お父さんだって辛いはずさ。アーザ君を戦う道具にするなんて。でもそこまでしてでもこの世界を変えないといけなかったんだ。」


「エーナガさん…僕…どうすれば…良いんですか…」

「それは君次第だよ。今のままでもいいし、お父さんの気持ちに応えてもいいしね。じゃ、僕はこれで失礼するね。この部屋から出て右にまっすぐ行くと出口があるからね。」




それから2週間経過した。
アーザの手術跡は癒え、自分の身体に兵器があることも気にしなくなりいつも通りの日常を過ごす様になった。


「リュートさん、本当にあのままでいいんですか?アーザ君ここ最近ずっとあんな感じですよ?」

「良いんだ。やはり息子には荷が重すぎたんだろう。それにまだ子供だ。子供たちを見守り幸せに暮らせるように努力するのが我々大人達の役割だよ。」


「我々って言っても何も出来る事が…はぁ…、ゴルボルーニュに潜入して折角手術まで施したのに、我々の努力、このままだと水の泡になりますね。あの兵器、どうします?」


「あのままでいいさ。どの道ここにはアーザ以外に適性な人間なんていないからな。それにいつかアーザ自身が使う時が来るだろう。あと、潜入した時に資料を見たところ、装備者が核や爆風を浴びたとしても、死ぬことは無い。と言う見出しもあった。それが本当なのか正直信じれないが、万が一ここに核が落ちてもアーザは生き残れると言う事になる。その時アーザが何をするか、世界を変える切欠をそれに託すのも悪くないんじゃないのか?」

「悪くないかもですが、本当にそうなったら、我々が死んだあとになりますね。」

「はは、そうだな。ならそうなる前にこの町の人に避難要請をしないとならないな。」