主人公
ノトス
アーザ
ラナ

遂に来ました悲哀から始まった話第5話
悲哀の少年アーザは本人も知らなかった衝撃の事実を知ることになる。

それぞれ違う場所に生き
それぞれ違う想いを抱き
そしてそれぞれ同じ目的を持つ少年達。

遂にこの3人が逢う時が来た。






Want To Cry,
But May Not Cry
GALMA


優しき少年は勇気を望む。それはこれ以上逃げず悪に立ち向かう為に。


怒れる少年は力を求む。それはこれ以上殺戮者に負けない強大な正義の力を。


機械武装の少女は平和を願う。それは沢山の人々の笑顔を見たいが為に。


彼らは考え方は違っても目的は同じだった。

それはゴルボルーニュの大統領、グレンガーを倒すことである。彼は世界中を恐慌に陥れた元凶。


あれからノトスは幾度となく基地を破壊した。しかし何度破壊しようとグレンガーはどこにもいない。

ノトスは破壊を続けるにつれ天使の様な翼もやがて抜け落ち悪魔のような翼へと変貌を遂げる。それはまるでノトスの怒りを具現化したの様な翼である。
巨大な爆発音と共にノトスは翼を広げ瓦礫と化した基地を飛び立った。
だが飛びたった所で行く宛などない。
やはり闇雲に破壊したところで当たりを引ける可能性はあまりにも低い。

己の無力さを痛感し、その悔しさを空を飛び回る事で発散させていた。




そんな時だ。一人の少年がノトスの元へやってきた。それはアーザだ。故郷で墓を作っていたアーザは遠方で大きな爆発音を聞きつけ、何かと思い急いで飛んできたのだ。
その爆発音は恐らくノトスが奇襲をかけた時の基地の爆発音である。



二人は空中で鉢合わせをする。

一人は悪魔の翼を羽ばたかせ、
一人は無機物の変形した右腕をしており宙に浮いている。
お互いに人間でありながら人間とは思えない姿であった。

「お前は誰だ?」


「僕はアーザ。近くで大きな爆発音が聞こえてここへやってきたんだけど…。君は誰?」

「ノトスだ。グレンガーを倒す為にやってきた。でもいくら要塞を破壊してもグレンガーはどこにもいない。」


「そっか…僕ら似た者同士だ。突然こんな変な姿になって、それにグレンガーに敵意もあることも一緒みたいだ」


「お前もグレンガーを狙ってるのか?奴は俺が倒す。引っ込んでろ。」

「僕は倒すつもりなんてない。僕も同じ事を考えて過去に一度ボルゴルーニュの施設を破壊した事がある。それで一つ分かった。」

「お前がボルゴルーニュの施設を初めて破壊したのか?あの事件は報道で全世界に広まってるぞ」

「うん。知ってる。それから施設の破壊を誰かがやり始めてそれが今も続いてる事も。それは君か。でもグレンガーを倒しても結局は未来は変わらない」

「あ?何だって?俺のやってることは無駄だって言いたいのか?」

「そうじゃない。誰が倒したとしてもグレンガーではない別の人間が今のボルゴルーニュを引き継ぐだけだ。結局は何も変わらない。」

「ならそいつらも倒せばいいだけの話だろ。お前、それは逃げてるだけなんじゃないか?」

「え…?」

「この現状を見て見ぬふりしてもう戦いたくない。この世界から目を逸らし引き込もって、更にその自分の力からも逃げてる。俺にはそうにしか聞こえなかった。初めてボルゴルーニュに打撃を与えたのがそんな臆病だったとは残念だな。」



二人が話ていると、そこへ何かが飛んでやってきた。それは飛行機にしてはかなりの小型でそして何より人間の形をしていた。


「なんだ?また変なのが来やがった。お前が呼んだのか?」

「ううん。僕は知らないよ。」

そしてそれは徐に二人の前へやってきた。
その姿は少女で機械に取り込まれているような異質な姿をしていた。


「お前は誰だ?」

「…ラナ……ワ…タシ…ハ…ラナ…」

「おいなんだお前。その薄気味悪い喋り方は…」


「…ラナ?それが君の名前?」

少女は頷いた。
すると少女の武装した機械から突然アナウンスが流れる。

━━━彼女の名前はラナと言います。彼女については、アナウンスのマリアが説明致します。この体の持ち主ラナは既に死亡しており、グレンガー大統領による兵器改造により現在の姿となりました。━━━

「死んでる!?それにグレンガーだと!?」

「ゴルボルーニュの兵器か!?」
ノトスとアーザはラナに警戒する。


━━━…否定します。正確には彼女はゴルボルーニュの住民でしたがレジスタンスでした。グレンガーはレジスタンスの活動に嫌悪が差し、自分の国内であるにも関わらず街を壊滅させたのです。こうして彼女達のレジスタンス勢力は消滅。
しかしその後彼女だけの遺体は兵器として改造されました。ですが死亡してもグレンガーへの憎悪と平和に対する強い意思を持ち続け、現在のように兵器ではなく、平和を求める者として新たに動きだしたのです。━━━

「そうか…レジスタンスか…君の事はよく分かる。君も辛かったんだね。でも、君はどうしてここが分かったんだ?どうして僕達の所へ?」

すると少女のアナウンスは衝撃の言葉を発した。

━━━それは先程の爆発音の元へ向かう際にアーザ様、貴方の内部に搭載された機械の電波信号を偶然発見し、座標化しここへ辿りました。あなたもラナと同じくゴルボルーニュ製である為ここへ辿り着く事が出来ました。━━━━

「…なんだって!?僕はグレンガーに造られた兵器だって言うのか!?」

「おい!どういう事だ!?」

━━━否定します。ボルゴルーニュ製ではありますが兵器制作履歴をスキャンしてもアーザ様の名前はない為、厳密にはグレンガー大統領が造らせたのではなく、別のどこかで、おそらく貴方の生まれ故郷で造られた可能性が高いです。━━━



「つまり僕は…ゴルボルーニュの兵器を使って故郷で、対抗する為に造られた全くの別物…。だから僕はこの力を…僕は最初から…故郷の皆の希望だったんだ…!何でずっと分からなかったんだ…!」


「お前ら二人ともグレンガーの兵器か!」


「待てよノトス!違うよ!僕達は造られただけで気持ちは君と同じだよ!それに僕達には共通の敵がいる。皆で力を合わせよう!」


「うるせぇ!お前もグレンガーの兵器なんだろうが!今はそうでも突然暴走する可能性だってあるだろ!そんな奴等と手を組むなんて御免だ!まぁいいさ。グレンガーなんて俺一人で十分だ!」

そう吐き捨てノトスは一人飛び立った。

「待って!ノトス!」

アーザの声も聞こえないうちにノトスは海を越え遥か彼方へと飛んで行ってしまった。

「その…ごめんラナ。僕がもっとしっかりしてればこうはならなかった…でもノトスの言葉も一理ある。僕達、急に暴走したりしないよね…?」


「ア…ブナ…イ……タ…スケ…ル…」
ラナはノトスを追うように飛んでいく
「ラナ!」
そう。ラナには分かっていた。先程アーザを座標化した際に別のグレンガー兵器が大量に迫っていたことを。恐らく基地は囮。破壊を見過ごしたのはノトスを誘う為の罠。伝える間もないままこの現状へと陥ってしまったのだ。


ノトスが飛んだ先、そこにはゴルボルーニュの兵器が展開していた。

空には戦闘機部隊が、海上には戦艦がノトスを狙っている。

ノトスが気付いたのも束の間、空と海上からノトスは攻撃を受ける。

反撃しようにも敵があまりにも多すぎる。
来た方向へ戻ろうとした時、
今度は潜水艦部隊が現れ海上から攻撃を始め行く手を阻む。

四方八方から砲撃を受け続けノトスは身動きが取れなかった。


ノトスは痛みを感じず身体は傷も付かない不死身の身体を持つ。しかし翼自体は爆風などの衝撃には耐えられず飛んでる時にバランスを崩す恐れがある。


アーザとラナがやって来た時にはノトスは既に砲撃を受けていた。

このままでは危ない。
「ラナ!君は援護してくれ!僕がノトスを助ける!」

アーザは己の身体を省みず砲撃の雨の中へ入って行った。

ラナは部隊に砲撃を行い次々に破壊していく。が多すぎて全て破壊するのは不可能だった。

遂にノトスの翼は機能しなくなり
そのまま海に真っ逆さまに落ちていく。

「ノトス!」

アーザは海面ギリギリで落ちるノトスを見事に掴みそのまま離脱する。

アーザとノトスを離脱を確認したラナもアーザを追うように離脱。


三人は小さな無人島に来ていた。

「なんで俺を助けた?」

「そんなの当たり前だよ!よく聞いてくれノトス。君一人じゃ倒すのは無理だ!今見たいに返り討ちされるだけだ!それにこれは君一人の問題じゃない。今ここには三人いる。それもグレンガーに恨みがある三人だ。僕達が力を合わせれば倒す事が出来るかもしれないだろ。」

「臆病者が何
「ああ!そうだ!僕は臆病だよ!対抗する為に造られたのに何もしないから故郷は無くなったんだ!僕が臆病のせいで!怒りで一度施設を破壊した後、今度は僕自身のこの力を恐れて二度と使わないと決めた臆病者だ!
だけど!それじゃ駄目なんだ!だからお願いだ。僕に力を貸してくれ!」


「(こいつ…真剣な目をしてやがる)…分かった。お前達に協力してやるよ。でも誤解すんな。俺はグレンガーを倒したら後はどうでもいい。そのまま解散するからな。」


「ありがとう。それでもいい。君に出会えて僕に足りないものがようやく分かった気がするんだ。僕も全部終わったら故郷に戻るつもりだ。ラナ、君もそうだろ?」


「…」
ラナは頷く。

ノトスは分かっていた。自分の危険も省みず身を呈して砲撃の雨の中を助けてくれた。
それが臆病者に出来ることではない。
アーザは臆病ではなく勇敢である事に。
気持ちはまだ一つに纏まった訳ではない。だが歪な形ながら三人はようやく一つとなったのだ。

そしてこの小さな無人島で三人は声を掲げる誓いを立てる。

「僕は!」

「俺は!」

「ワタ…シハ…!」

勇気を踏み出しこれ以上この世界を傍観しない!

そして世界中を恐慌に陥れたあの男、グレンガーを倒す!

そうすればいつか必ず平和が訪れる。

偶然なのか必然なのか、遂に今、三人が揃った。


かつてない憎しみや悲しみに包まれ

泣くしかない時もある。

しかし僅かな絆と希望が見えたからこそ

泣いてはいられない時もある。

だからもう泣いてる場合じゃないんだ。

僕達は戦うんだ。

今こそ反撃の時。
三人いればこの恐慌の世界に終止符を打つことが出来るかも知れない…。



~~

閲覧ありがとうございます
今回は曲の流れとあんまり合わないのでタイムガイドは無し(笑)

あとタイトルにもある涙の描写を書けなかったのは反省点ですね。
でも作曲者のGALMA様にはこの上無いほどに喜んで頂き良かったです(笑)

ノトスに言われるまでもなく臆病なのはアーザ自身が一番分かっていた。

故郷で未来を託され、兵器になったものの臆病だから戦う事が出来なかった。
だから故郷はなくなった。

怒りに任せて攻撃したものの今度はこの自分自身の力を恐れそのまま月日を流した。

そんな時にノトスと出会いそれがアーザにとって足りなかった「勇気」になったんだと思います。

この話もまだまだ続きますね。寧ろ今からが始まりな気が(笑)
次の楽曲が楽しみです。

第一話

アーザ~託された力~

第二話

ノトス~孤高の復讐者~

第三話

グレンガー~絶対的正義~

第四話

ラナ~正義への反逆者~

第五話

団結する想い

↑今ここ

次、第六話(前編)
本当の正義とは