そして決勝戦はGAMMAのチームとSIGMAとなった。
戦闘開始前、GAMMAの元にSIGMAがやって来る。
「GAMMA……アンタにはガッカリだよ……アンタの恨みと言うのはそんな薄っぺらいものだったのか」
「SIGMA。あの時の俺は間違っていた。嫌なものは何も見ず、何でも破壊すれば良いと、そう思っていた。だが違うんだ。中には少なからず良いものもある。その良いものを模索する事で嫌な物も良いものに変わる可能性がある。それをあの時の戦いでアイツは……BURIEDは教えてくれた。」
「……」
「俺は、お前にもそれを分かってもらいたい。お前がもう二度と仲間を傷つけないようにしたい。その為にも俺は、必ず勝つ。勝って俺がお前に教えてやる。」
「あぁ、いくらでも吠えればいい。そんな馬鹿げた希望諸共俺の餌になってもらうからな」
SIGMAはGAMMAの砲台に冷たい視線を送ると、自分の控え室へ戻っていった。
畜生、俺の砲台なんてアイツに食われてたまるか……。
GAMMAは悔しげな表情で彼の後ろ姿を目で追う。
しかし、ふと彼は何かを思いついたように表情を緩める。そして、ダッシュで仲間達の元に行き早口で話し始めた。
「みんな聞いてくれ!俺に考えが────
そしてGAMMAとSIGMAの因縁の戦いが始まった。
ステージは同じく摩天楼。
GAMMAの部隊編成は砲台が1つで後は全て飛行機だ。SIGMAに対して完璧に機動性を重視したのだろう。GAMMAにしては極めて珍しい編成だ。
対してSIGMAは相変わらず1体のみ。
この対戦、一体GAMMAはどう戦う?
BATTLE START
対戦開始と同時に、GAMMAが部隊に合図を下した。
すると飛行機達は、GAMMA周辺のミニチュア高層ビルを破壊し始める。
あっという間に砲台GAMMAの周辺は障害物がなくなった。なるほど、これでSIGMAを近づけさせないつもりだ。
SIGMAは自在に空を飛ぶ事は出来ないが強靭なジャンプを使ってビルを飛び移り、相手に近づく事が出来た。
つまりビルが無ければSIGMAは簡単に近づく事が出来ない。GAMMA側からも敵の姿を補足しやすくなり、攻撃が当たりやすくなる。
GAMMAのやつ、考えたな。
それはいいが、さっきからSIGMAが見当たらない。どこにいる?
GAMMAは周囲探索の指示を出し飛行機達が散らばった。これだけ静けさに包まれた試合を見るのは初めてだ。
……嫌な予感がする。大丈夫だろうか?
俺の予感は、数分後に的中してしまった。
探索で全ての飛行機が散らばる中、はぐれた一機が一際大きなビルに近寄った。
その瞬間、ビルの影に隠れていたSIGMAがSPEED UP状態で一気に飛び付き、襲いかかる。
そのままSIGMAの腕は飛行機の胴体を貫通。
「1機撃墜」
SIGMAは落ち着いた声でそう言う。
不意打ちを食らった機体は地上に落下。即座にリタイアとなる。
「SIGMA目視確認!援軍を要請する!」
「目標発見!攻撃を開始する!」
「11時の方向に敵を確認!直ちに急行する!」
「作戦通り定位置に付く」
「敵発見!今から援護に向かう!持ちこたえろ!」
SIGMAが奇襲した途端に様々な機体からの発声が入り乱れた。
GAMMAはそれら一つ一つに的確な命令を下していく。そして自身も遠くから援護射撃を行う。
その姿は、大軍を率いる軍師そのものだった。
GAMMAは俺とは違った。あんなに速い奴でも全力で戦っている。
俺は退避を判断したが、逆にそれが敗因だと言っても過言では無い。
しかしこのGAMMAの総攻撃がSIGMAに通じるのかと言えば……。
どうやらそうでも無いらしい。
「2機撃墜、3機撃墜、4機撃墜……」
SIGMAの機体を破壊するペースは一向に変わらない!
やはりSIGMAのあの速さじゃ無理だ!接近戦なのに機銃どころか弾道ミサイルすら当たってない!
「5機撃墜、6機撃墜……」
そしてその時気付いた。SIGMAは飛んでいる飛行機を利用してGAMMAに近付いていた。
「GAMMA!危ない!」
俺の声が届く前に、SIGMAは高速状態のままGAMMAの砲台に飛びついた。GAMMAは装甲を何度も殴られ、このままでは破壊されるのも時間の問題である。
その時俺は思い出した。
そうだ!GAMMAにはあの光線がある!いくら素早いSIGMAでもあの光線は避けられないはずだ!
「GAMMA!あの光線を使え!」
俺がそう言った瞬間。
「無駄だ」
後ろから落ち着いた声が聞こえた。
「お、お前は!」
後ろを振り向くとそこにはよく見たヘルメットを着けた男がいた。ZEROだ。
例のGAMMA戦で機体を失って以来まだゲームには参加していない。
だが観戦にはよく来ていた。
「何で止めるんだZERO!このままだとGAMMAが負けるだろ!」
俺はZEROの胸倉を掴む勢いで詰め寄る。だが、ZEROは一切口調を変えない。
「BURIED、GAMMAはお前の声が聞こえようともあの光線は使わないで勝利するつもりでいるぞ。」
「どういう事だ?」
「確かにGAMMAが光線を使えばこの戦いは勝てるだろう。それはGAMMAが一番分かっているはずだ。しかし、それで勝ったとしてもGAMMAが喜ぶと思うか?」
「それは……」
「それにあのSIGMAは優勝する事など考えていない。GAMMAに復讐する事が目的でこのトーナメントに入ったに過ぎん。GAMMAが負ければそれで良し、GAMMAが光線を使って勝てばプライドを傷つける事が出来る。SIGMAはそう考えている」
「つまりこの勝負はGAMMAが光線を撃たないで勝たなければ本当の勝利は得られない……」
「そう言う事だ」
俺は、真剣な顔で操縦桿を握るGAMMAを見た。その姿はもう光線を使っていた時のGAMMAではない。
GAMMA……使わないとしたらお前には何か別の策があるのか?一体どうやってこの状況を打破するんだ……?
一方SIGMAはGAMMAの硬い装甲を殴りながら煽りだす。
「どうしたGAMMA。このままだと負けてしまうぞ?もう一度アンタの作り出した最高傑作のアレをまた見せてくれよ!」
だがGAMMAは黙ったまま砲台からSIGMAを振り落とそうと奮闘する。しかし、両足も使ってがっしりと掴まるSIGMAには効果がないようだ。
突然鈍い金属音が戦場に鳴り響いた。
そう。遂に砲台の硬い装甲が破られたのだ。そのまま戦闘不能扱いとなりGAMMAはリタイアとなった。
それはあまりにも、あっけない終わり方だった。
「畜生!GAMMAがあんな奴にやられたのかよ!」
俺は落胆する。いや、落胆よりもやり場のない怒りの方が強かった。あのGAMMAがあんなヤツに負ける訳がないはずなのに。
何でGAMMAはもっと抗わなかったんだ……。何でそんなに簡単に負けたんだ!
だが、俺の隣にいたZEROは悲しんでいる様子などない。それどころか笑っているようにも見えた。
「おい!ZERO!お前は悔しくないのかよ!お前だってアイツの気持ちくらい分かるだろ!そんな薄情者だったなんて失望した───
「BURIED、あれを見てみろ」
そこまで言って、俺はZEROがステージの一部分を指差しているのに気が付いた。その先を目で追う。
────SPEED DOWN────
GAMMAの撃墜を最後に、満を持してSIGMAは元の速さに戻り地上に降りた。
「GAMMA、コイツは本当に面白い奴だ」
ZEROが再び話し始める。
戦場が静けさに包まれる中、
「この時を待っていた!!」
戦場にGAMMAの声が聞こえた!
どこからともなく現れた1機の飛行機がSIGMAにミサイルを放ったではないか!
「まさか憎い相手の試合で『憎かった機体』を使うなんてな」
通常速度のSIGMAは避ける事も出来ず、そのまま被弾。軽装重視のSIGMAの装甲は薄く、大きく損傷し、戦闘不能となる。
この瞬間、GAMMAのチームの優勝が決定したのだ!!
観客席は歓声で盛り上がった!
「ZERO……、お前は気付いていたのか?GAMMAが飛行機を使っていたことを……」
「いや、気付かなかったな。だがフォーメーションを見てみろ。あの後ろの飛行機を操作しているのはGAMMAと書いてある。だが、SIGMAは思い込んでしまった。GAMMAは砲台しか使わない。と。その思い込みが勝敗を分けたと言う事だな。さあ、行くか。今回の英雄を迎えに」
俺達はGAMMAの元へ向かった。
その時、GAMMAはSIGMAと話していた。
「SIGMA。俺がお前を傷つけたのなら謝ろう。だけどな。そんな復讐心だけで動くようなみっともない事はやめろ」
「……」
「そうだSIGMA、お前にこいつを渡そう」
そういってGAMMAはSIGMAの手に戦闘機のコントローラーを持たせた。
「こいつは最後にお前のロボットを破壊した俺の戦闘機のコントローラーだ。もうあの時使っていた砲台は無いんだろ?次に来るならこいつを使って、仲間を集めて、それか仲間を集めているところに入ってエントリーしろ」
「……復讐以外に、俺が戦う理由なんてあるか?」
「当たり前だろ。ここに参加している奴はこのゲームが楽しいから戦うんだ!」
SIGMAは相変わらずふて腐れており、そのまま去っていた。が、手にはしっかりコントローラーを握っていた。
SIGMAが去った後、俺はGAMMAに尋ねる。
「なぁGAMMA、SIGMAはまた来ると思うか?」
「もちろんアイツはまた来るさ。今は無理でもいつか戻ってくる。今度はこのゲームを楽しむ為にな。俺がそうだったんだから間違いない。次に会うときは良きライバルになるだろう」
戦場で砕けたSIGMAの機体の破片から不規則に電子音が鳴り響いていた。
電子音はしばらく鳴り続けていたが、不意にそれは止み、静寂だけが残る。
復讐と言う憎悪を動力に激しく戦わされた身体の最期は、
復讐から解放され、眠りにつくように安らかなものだった。
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SIGMA閲覧ありがとうございます。
鳩サブレさんとの合作でZEROから始まりもうこの話も3作目となりましたね。
曲名がSIGMAだったので頭の中で大騒ぎでした(笑)
SIGMAという名前は既にGAMMA戦で勝手に名前つけたモブだったので(笑)
一旦GAMMA戦のSIGMAの名前を変えようと思いましたが
逆にこのままでGAMMAの裏話として作っても面白いのでは?
と思い、今の話に仕上がりました。
今回は更正したGAMMAが主人公となり元仲間を更正させるため頑張ってくれました。(CODENAME:DIT)
音芸神話準レギュラー枠の座を狙っている鳩サブレです、こんにちは。
今回まさかのCODENAMEシリーズ3作目が出てしまい、Twitterで見つけた瞬間「あっ、コレはお誘いがあるな」と思いました…w
誰かかっこいいZEROさんのイラストをDITさん宛に送ってください。きっと全力で喜ぶと思われます。
(CODENAME:HATOSABURE)
