主人公
“正義”のグレンガー大統領
作者コメント
正義とは何か?悪とは何か?正義は必ずしも正義なのか?悪は必ずしも悪なのか?
少年達の敵であるこの国の大統領、それは一体どんな人物なのだろうか。
悲哀と復讐の裁きから始まりbroken wingと続き第三話。
尚、前回の二人の少年に名前がついたのはこの話からとなりました。
絶望と怨恨と
狂乱の源
MGR-T
(00:00)
やがて何事も無かったかの様に夜が訪れる。
大統領の奇襲に失敗した少年ノトスは屋根の吹き飛んだ要塞の真ん中で仰向けに寝そべっていた。手足を広げ、この上無いほどの悔しさを抑え込み、静かに空を見ていた。
強大な力で核工場を破壊した少年アーザは跡形も無くなった故郷に戻り、悲しみの中、一人で数え切れないほどの墓を立て続ける。
彼らは宛もなく、これからどう行動すればいいのか、何も分からなかった。
(00:14)
一方、大統領は命を奪われかけた事に激怒していた。この私、正義に楯突く存在がいると。
実際、いち早く感知し素早く逃げる事が出来たのは不幸中の幸いだった。もし逃げずにあの要塞に残っていれば今頃どうなっていただろう。
(0:27)
彼は要塞から数十キロ離れた別の基地に居座る事とした。
続いて基地に大量の武装した兵士の軍を展開させる。そう。何があっても正義は負けてはならない。正義は必ず勝たなければならないのだ。
(0:40)
少年達の敵であるこの国の大統領、それは一体どんな人物なのだろうか。
これは少年達が行動を起こす前の話である。
この軍事国家の主導権を握るグレンガー大統領は自らが正義であると信じて止まない人間だった。
彼は幼い頃、戦争を経験しており、教育もその時のまま育っていった。
その時の経験の為か今もその思考を持っている。
そして今や権力をもつのは自分。
だから彼は自分が正義であることを信じている。
グレンガー大統領は国民達に向けて演説を始開始する。
この時の演説は新しく開発した核兵器に対する紹介であった。
「この世界には至る所に悪が蔓延る!それは禍禍しく、実に恐ましい光景である。だが我々は違う!悪ではない。正義だ!この世界で我々は光を導く正義でなければならないのだ!
そして悪と戦う為に今回我々が開発し作り上げた兵器、これは悪に対する正義の裁き。我々の力であり、希望である!」
(1:18)
その大統領の演説は、あらゆる国の諜報機関によって取り上げられ、放送されていた。元々グレンガー大統領の演説はその国のみの放送であるが、
実際は世界中に演説は広まっているのだ。
(1:32)
やがてグレンガー大統領の演説が終わり、その国は夜を告げ、寝静まる。
(1:50)
丁度その頃、その大統領の演説を聞いたとある国のとある町が怒り、グレンガーを批判していた。
正義が何故兵器を作り続ける?
正義が何故無差別テロを行う?
正義が何故戦争を始める!?
これが正義であっていいのか!?
相手を悪と思えば正義は何をしても許されるのか!?
違う。違う!これは虐殺だ!
それからその町は世界へ向けて平和と正義が何かを唱えた。メディアを通しその演説は世界へ広まる。そして最後に決定打となる言葉を発する。「グレンガー大統領は正義では無い!我々が正義だ!」と。
だがその町の密かな行動が終わりを迎えるのであった。
(2:16)
そう。この町の行動がこのグレンガーの耳に入ったのだ。
グレンガーは怒り狂った。我々を批判する者達がいる。
もうその国を野放しにする訳にはいかない。
直ちに戦争を開始する!
(2:22)
しかし厳密には国自体が我々を批判しているのではなく、その国の小さな街の住人が批判していたのである。それならわざわざ戦争を始める必要はない。
その町だけを壊滅させれば良いだけの事。となれば手っ取り早く壊滅させる方法は無いものか。
(2:29)
丁度その時、先日演説で紹介した新作の核兵器の投下準備が整ったとの通信が入った。
(2:36)
グレンガーは「これだ」と口にし、今回の爆弾の威力調査のついでに悪の蔓延るあの国の町に投下するように指示した。威力を調査し、更に悪を退治出来る為、それは正に一石二鳥である。
直ちに作戦行動開始となった。
(2:42)
その日、町の人達は騒ぎ立てた。今真上を飛んでいる爆撃機はあのグレンガーの国の物では無いか?と。町には不穏な空気が漂った。
(2:54)
そして正義の名目にかけ、罪の無い住人目掛けて核爆弾は投下された。
その瞬間、町は悲鳴が響き渡り、混乱状態となる。逃げ惑う人々、泣き叫ぶ人。空を見上げ呆然と立ち尽くす人。だがそれらは瞬く間に無意味な行動となった。何故なら着弾した途端に町の人々は一瞬にして燃え、灰となったのだから。
(3:07)
投下された核兵器は人々の命を一瞬にして奪い、町を壊し、建物は瓦礫となりその町の日常を瞬く間に地獄と化した。
だがこれはあくまでも開発した核爆弾の実験に過ぎない。
悪の蔓延る町の住人を根絶やしにしたのはついで作業に過ぎなかった。
グレンガー大統領はこの様子を目にし笑みを浮かべる。
「我々こそが正義!反する悪には裁きを下すのみ!今ここに悪を消し去った!そして我々の開発した兵器の威力も素晴らしく、今後も活躍に期待したい。」
勿論この事に世界が黙っておらず、グレンガーのやり方に反対する国は数多く存在する。
(3:20)
それからと言うもの、グレンガーは至る所に核爆弾を投下活動を実行した。
爆心地は全てグレンガー大統領を批判する国の町のみである。
グレンガーを止めるには戦争を開始し本当の正義を叩き込まなければならない。だがどの国も戦争をする事が出来なかった。
何故ならグレンガーの国は他の国と比べ明らかに武力や兵器が大量生産され、軍事力も整っているからだ。戦争が開始すれば毎日のように核兵器が落ちて来ても何も不思議では無い。
(3:58)
これは数年程前の事、実際にグレンガーを止めるべく開戦した国があった。開戦と直後に毎日のようにその国の空には核兵器が雨のように降り注いだと言われる。
結局その国は1週間足らずで降伏。終戦を迎えた。
その事実を恐れどの国もグレンガーへと立ち向かう事が出来ないのだ。
(4:11)
グレンガーの暴虐は世界を恐怖に陥れた。
そうだ。もう誰にも止められないのだ。この世界はグレンガーによって支配されている。そう言っても過言ではない。
(4:18)
そしてグレンガー大統領の命令で核兵器が投下された爆心地、そのうちの二つが強大な力を秘めた少年達の故郷だったのである。
(4:25)
外出で故郷を離れ一命を取り留めた神の力を秘めた少年ノトス。
。
不死身で生物兵器の力を持ち、街で独り生き残った少年アーザ。
二人は一瞬にし、故郷を人を、全てを失い悲嘆した少年達である。
(4:37)
正義とは何か?悪とは何か?正義は必ずしも正義なのか?悪は必ずしも悪なのか?
彼らは心の中にグレンガー大統領に強い怒りと憎悪を持ち、今もこの世界のどこかで生きている。
(4:47)
同じ心の傷と想いを持つ二人が協力し、もう一度立ち向かう事が出来れば、あのグレンガーに打ち勝つ事が出来るのかも知れない…。
~~
閲覧ありがとうございます。
悲哀から続くこの話も更新されましたねー。
基本的に書く話には完璧オリジナルの名前を作ったりしないのですが今回からは無名が3名もいるのは文章にも困るので名前のほうをMGR-T氏に考えて頂きました。
さてさて、この話はまだまだ続きそうですね。
正義と悪。意味は全く違う言葉なのに内容は似て非なる難しい言葉です。
第一話
アーザ~託された力~
第二話
ノトス~孤高の復讐者~
第三話
グレンガー~絶対的正義~
↑今ここ
次、第四話
ラナ~正義への反逆者~