主な収録筐体
DEEMO、VOEZ、ボルテ

主人公
私(ちっぽけな存在)

作者評価
★★★★☆

作者コメント



彼女は羽ばたいた。
この大きな世界に向かって。
それは力強く、美しく。
風と共に、どこまでも。







PUPA│世界に向かって




彼女は羽ばたいた。




この大きな世界に向かって。




それは力強く、美しく。




風と共に、どこまでも。

それは願いが叶った瞬間であった。
世界と呼ばれるこの空間は途轍もなく広く、途轍もないほど様々な物がある。
そんな世界を見てみたい。旅してみたい。それが彼女の願いであった。


これは彼女が生まれたばかりの頃。彼女は当時、ちっぽけな存在だった。誰にも気付かれないような小さな体つきで小さな葉っぱに住んでいる。その時はまだ何も知らなかった。
ただ固い葉っぱにしがみつき、柔らかな食べられる所を探し、見つけては口に入れる。ただそれだけ。
そんな生活に何か意味なんてあるのか?


やがて彼女は一枚の葉っぱを食べ尽くし、枝へ移り別の葉っぱへ移動する。彼女にとってこの小さな木が家であり、世界だった。この木から離れると、そこはもう別の次元であり、二度とここには帰って来れない。そう思っていた。だから彼女はこの木から離れようとせず、葉を食べ続け生きていた。

ある日の事。彼女は葉っぱに黒く、ちらちらと動く物を見つけた。その影に気付き上を向く。眩しいくてよく見えないがそこには確かに何かが飛んでいる。

ひらひらと空中に。あれは何だろう?
とても艶やかな色で美しい姿である。

するとその時、ひらひらはこちらによる向かって飛んできた。
私は慌てて悲鳴を上げる。
襲われる。もうだめだ。私はそう思った。
しかしひらひらは「こんにちは」と一言。

私は涙目になりながら「こんにちは」と返す。
するとひらひらは
「驚かして悪かったね。そんなつもりじゃなかったんだよ、許してね。」と言った。

「どうして私に声を掛けたんですか?」と尋ねる。
「なんでだろう?君の姿、なんだか懐かしいな、って思って思わず声を掛けてしまったよ。」

ひらひらの話の意図がまったくわからなかった。
「どうして飛んでいるんですか?」私はまた別の事を聞いてみた。
するとひらひらは少し悩んだ顔を見せてこう答えた。
「んー、何でだろうね。この世界を旅してみたかったからかな?僕達が生きているこの空間は『世界』って言うんだよ。その『世界』には色んなものがある。それをこの目で見てみたいから僕は飛んでいる。と言う感じかな?」
「あの、私もいつか貴方みたいになれますか?」
「もちろんなれるさ。君が目標をもって今を生き続ければね。それじゃあまたね。」そう言ってひらひらはまた飛んでいった。

不思議な時間を経験した気分だった。何より空を飛ぶのはとても楽しそう。


そこで彼女は思った。いつか私もあんな風に空を飛びたいと。
この時遂に彼女は目標を見つけた。
空を飛び、この世界を旅してどんな物なのか見てみたい。という目標である。


またある日の夜。彼女は空を見上げた。白くて丸い物が光っている。
彼女は思った。何度葉を食べては脱皮を繰り返しただろう?一向に願いが叶う気配が無い。葉を何枚も食べ尽くした所であんな風に空を飛べる姿にはならない。しかし彼女は諦める事は無かった。
ひらひらは目標を持って生き続ければ必ず叶うと言ってくれたからだ。


最近彼女は感じ始めた。日に日に柔らかい身体が硬くなっていくことを。硬い身体は徐々に彼女の行動を狭めた。硬く、重くなった身体では動きたくても動けない。そんな苦しさが彼女を襲った。
やっとの思いで枝にしがみついた時、彼女の体は完全に動かなくなってしまった。もうこれでは葉を食べる事すら出来ない。

動く事も食べる事も出来なくなった今、彼女に許された行動は一つ。

それは眠る事だった。眠る事は何もかも忘れさせてくれる。だから彼女は眠る事は好きだった。


だが眠る時までにも彼女は違和感を覚える。
身体がとても暖かいのだ。
この優しい暖かさ、実は昔にも経験したことがある。それは彼女が卵から生まれる前の時。
卵の殻の中は同じような暖かさだった。
そんな昔の感覚が今も感じるなんて滑稽ではないか?
たがこの優しい暖かさは眠気を誘い、感覚を奪って行った。足も背中も、全ての感覚が無くなり、
遂に彼女は眠り始めた。



そしてある日、彼女は眠りから醒める。

あれから記憶が飛んでいる。その時彼女は真っ暗で狭い所にいた。

ここから出ようと彼女は硬い殻をこじ開け、その割れ目から体を乗り出す。

その時、彼女はまず違和感を覚えた。ここは住んでいた木である。見慣れた景色。だが今までと違い、身体がとても軽く動きやすい。今まで硬く重かった身体が嘘の様である。更に背中に何かがある事にも気付いた。

そこで彼女はすぐに確信する。今背中にあるもの。これはあの時見たひらひらと全く同じもの。そう、すなわち羽である。
羽が今、彼女の背中に生えているのだ。


彼女は元自分だった殻にしがみつき、縮んでいる羽が伸びるを待ち、飛び立つチャンスを待つ。

この姿。ちっぽけだったあの時の面影など何処にも無い。
彼女は自分の願いを叶えるまで諦めなかった。
だから今、この様に美しい姿を手に入れるまでに成長し、空を飛べる力を授かったのである。


そして風が吹き始めたその時、
彼女は羽ばたいた。




この大きな世界に向かって。




それは力強く美しく。




風と共に、どこまでも。


~~

蛹閲覧ありがとうございます。蛹って書くとあさきの曲になってしまう(笑)
蝶のイメージがあるけどPUPA(ピューパ)の意味は蛹でその他に未成熟と言う意味もあるらしいです。
上のジャケットでどれが好きかと言うとDEEMOのジャケットが好きですね。ちゃんと蛹も描かれていて今にも飛び立つ感じが伝わってきます。この話もDEEMOのジャケットを元に書き始めました。
後は最初と最後の文面が全く同じなのも曲を意識してですね。創作するにあたり、最初と最後を同じ文章にするのは初期段階から考えていました。その縛りを用いて完成した話がこうなりました(笑)