本問は.直接主義と口頭主義の理解を問うものである。
直接主義とは,
裁判所が直接に取り調べた証拠だけを判決の基礎としうるという原則である。
この原則は,一般に,つぎの2つの内容を持つとされる。
①証拠調べは公判裁判所が自ら行うべきであり,他のものに代行させてはならない(形式的直接主義)。
②裁判所が直接オリジナルな証拠に接すべきであり,他の証拠で代用してはならない(実質的直接主義)。
これに対して,口頭主義とは,法廷における主張・立証を口頭で行うべきものとする原則をいう。
1 .正しい(刑訴315条本文)。公判手続の更新は,新たに審理に加わった裁判官が,それまでの公判手続の内容を自ら直接認識するために行われる(具体的には刑規213条の2参照)。これは,直接主義(形式的直接主義)の要求にほかならない。
2.正しい。受託裁判官とは,訴訟の係属している裁判所が他の裁判所に証拠調べ(刑訴163条)や強制処分の実施(刑訴66条・ 125条)等を嘱託した場合に,その処理にあたる裁判官のことをいう。つまり,受託裁判官は.当該事件の審理に関わらない裁判官である。したがって,直接主義(形式的直接主義)の要請により,受託裁判官による証拠調べは例外的なものにとどめなければならない。
3.誤り。口頭主義は主張・立証の方法に関する原則であって, 取り調べる証拠の種類を制限するものではない。なお,書証を「朗読」しなければならない(刑訴305条)のは口頭主義の要請である。
4.正しい。書面が人の供述を内容とする場合にそれを証拠とすることは,オリジナルな証拠である供述に代えて書面を用いていることになる。当該書証を裁判所が自ら取り調べれば形式的直接主義には反しないが,実質的直接主義には反する。この限りで,直接主義は伝聞法則(刑訴320条1項)と重なり合う(同ーではない)。
5.正しい。書面による審理ではなく口頭による主張立証が行われることによってこそ傍聴人は審理の内容を容易に理解することができる。その意味で,口頭主義は裁判の公開の要請にかなう。
正解= 3
これが法曹養成大学院のレベルだということ。簡単ですね。