対象事件の重大性(法定刑)と刑事手続  | Great Materia大学院 jurispredence(法理学科)法曹(弁護人・法学検定上級)短期養成講座

平成20年 2008年 新司法試験 刑事系科目 第21問

〔第21問〕(配点:3)
次のアからキまでの各事項のうち,法定刑によって法律上当然にその結論が異なることにはなら
ないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№29])
ア. 被疑者の国選弁護人選任請求権の有無
イ. 検察官による起訴猶予の可否
ウ. 簡易裁判所が専属的に管轄権を有する事件であるか否か
エ. 必要的弁護事件であるか否か
オ. 保釈保証金の没取決定の可否
カ. 公判前整理手続に付する決定の可否
キ. 第一審の公判期日における被告人の出頭義務の有無
1. ア エ キ 2. ア オ カ 3. イ ウ キ 4. イ オ カ 5. ウ エ カ


解説
司法試験の問題は、
昔の問題が解きたかったら
ここで開示されているから。
択一
https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/shiken_shiken00.html
論文
https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/shiken_ronbunshiken.html

「法定刑によって」と問題文に書いてあるから
法定刑による制度の違いをこたえればいいという問題だな。
具体的には、法定刑による罪の軽重で、法律上結論が異なる
規定をしているものとそうでないものの〇×をつけろという問題だな。

ア 法律上当然に結論が異なる。
被疑者の国選弁護人選任請求権は
死刑または
無期もしくは
短期1年以上
の懲役もしくは禁錮
にあたる事件のときに
認められる(刑訴37条の2)
から、結論が異なるよな。

イ 法律上当然に結論が異なるわけではない。
検察官による
起訴猶予の
判断は、
「犯人の
性格、
年齢
および
境遇
犯罪の軽重
および
情状
ならびに
犯罪後の
情況」
を考慮して行われる(刑訴248条)
と刑訴248条に書いてあるから、
法定刑による制約は規定されていない。

ウ 異なるよな。
簡裁の専属管轄権というのは、当然だよな。
簡裁の専属管轄権というのは、
罰金以下の「刑」、
選択罪として罰金が定められている罪
または
刑法186条・
252条
もしくは
256条
の罪に係る
訴訟である(裁33条1項2号)。

エ 異なる。
必要的弁護の対象になるのは、
死刑
または
無期
もしくは
長期3年
を超える
懲役
もしくは
禁錮
にあたる事件(刑訴289条1項)
と定められているからだ。

オ 「法律上」
「当然に」
「結論が」
「異なる」わけでは
「ない」

保釈金の没収は、
被告人が犯した
とされる
罪の
「法定刑」
のみを
基準として判断
されるわけではない。

日本語が多くつながってきて
1行が1つの意味を完成させるから、
刑訴法をやりこんでないと
意味が分からないかもしれないけど
やっぱり1か月は勉強しないとね。

刑訴96条1項に
書いてある。

(保釈、勾留の執行停止の取消)
第96条
1.裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
 ①被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
 ②被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 ③被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 ④被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
 ⑤被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
2.保釈を取り消す場合には、裁判所は、
「決定で」
保証金の全部又は一部を
「没取」することが
「できる」。

1項各号には
いろいろ書いてあるけど
「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」
「など」が
「取消事由」
になる
と書いてあるが、
被告人が犯した
とされる
罪の
「法定刑」
のみを
基準として判断
されるわけではないからな。


2項には
「決定で」
できる
と書いてあるよな。


カ 「法律上」
「当然に」
「結論が」
「異なる」わけでは
「ない」

(公判前整理手続の決定と方法)
第316条の2
裁判所は、
充実した公判の審理を継続的、
計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、
検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、
第一回公判期日前に、
決定で、
事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、
事件を公判前整理手続に付することができる。

法定刑のみを基準にして
事件を公判前整理手続きに付すかどうかを
決定するものと
されているわけではないよな。

ここは、
裁判員49条も参照するといい。

キ 「法律上」
「当然に」
結論は
「異なる」。

刑訴法284条には、
50万円以下の
罰金
または
科料
にあたる事件については、
被告人は、
公判期日に出廷することを要しない
と書いてあるから。

これは、基本的な、当たり前の常識だからな。
こんな所で間違えるようでは
刑訴法を体系的に使いこなせていないから、
こんなことも答えられなかった法学学習者は
刑訴の問題練習が足りない。

こんな問題もできないのだったら
恥ずかしいと思わないとな。
国から「知ってないといけない」と
強制されてるのだから。
警察官や検察官は、こういうのを熟知して
せこい攻撃をしかけてくるのだから。
被疑者や被告人が、警察官に聞いて、こういうことを教えてくれるのか。
国選弁護人が接見にきて、被疑者・被告人ができること以上のことをやってくれると思うのか?
終わった事実は、変えられないのだから、
当事者主義なのだから、自分でできないとダメだと
国から強制されているのだから、
それが嫌だったら、こんな国家を解体しないとな。
こんな国は無くなったほうがいいのだぞ。
それが、私の伝えたいことなのだ。

旧刑訴法や現行法を学ぶことは
人間の歴史を学ぶことになる。
そのときの法は、その当時を反映しているが、
学習したら、条文の内容が、おかしいと思わないとな。