ディズニー映画にもなった「くまのプーさん」など数々の絵本の名作を生んだ英国で、日本人イラストレーター、こうせいさん=東京都出身=が2007年、英国の絵本作家の登竜門となる大手出版パンマクミラン社の絵本賞に入賞しました。

子どもへの教訓などを重視する英国的な手法に、日本の漫画の要素を加えた絵本づくりが高く評価されており、将来はゲームやアニメの比重が高まる日本で絵本の「復権」を目指すつもりです。

ロンドンの約400キロ南西にあるファルマスの自宅で日本のマスコミの取材に応じました。

こうせいさんは取材に対して「絵本は子どもの心の真っすぐなところに入っていくんです」と回答。絵本の特長を強調しました。

入賞作「レター・イーター(ことばどろぼう)」は「映像化できない、絵本にしかできない表現」を試みたといいます。

日本の大手通信会社を2000年に辞め、夢だった絵の創作活動に専念。

学生時代に発展途上国を旅した経験から、貧富の差の解消をテーマの中心に据えて絵本を描きましたが、日本の出版社からは「あからさま過ぎる」として、もっと軽いテーマの作品を求められました。

欲張りは後悔することになるというメッセージを込めた絵本「こころどろぼう」が2003年、日本で賞を獲得して「道が開けた」といいます。

しかし、その後、留学した英国では日本とは対照的に「何も考えずに描いているのではないか」と指摘されました。

もっと環境問題や社会問題を作品に織り込むように指導も受けました。

刺激的な漫画やアニメ、ゲーム市場が日本ほど発達していない欧州では今も絵本市場が活発で、新しい表現方法を積極的に絵本に採用していると感じています。

その一方、英国では仕事の仲介エージェントから、日本のイラストなどの先進性を称賛されました。

こうせいさんは「日本は海外の素晴らしさのみを強調し、必要以上に自らを卑下している部分もある」と指摘します。

こうせいさんの作品は日本時代、絵で埋め尽くされていたが、最近の作品にはタッチの少ない空間が目立つようになってきました。

「意識的なメッセージの押しつけではなく、楽しんで描いていることがにじみ出るような作品にしたい」と思うようにもなりました。
こうせいさんは「将来は日本で、世界に発信でき、何世代も親しまれる絵本をつくりたい」と意気込んでいます。


小松拓矢

参考:http://www.slinkypictures.com/work/