先日からお話ししている通り円高が進むと、今後の日本経済はどうなるでしょうか。企業、家計、財政の3主体について検討します。
まずは、日本企業の業績への影響。
一昔前は、円高により日本企業は大幅な減益を余儀なくされる構造でしたが、製造拠点の海外移転等により円高に強い体質になってきており、その影響は半分くらいになっているようです。ただ、それでも悪影響は残ります。
それは、①円高による価格競争力の低下で輸出数量の減少、②為替差により円建の販売価格の下落、③海外子会社の決算連結のため円換算した時に売上利益等が目減りすること、の3つの形で現れてくることが予想されます。③は計算上の話でその会社の稼ぐ力が衰えているという訳ではないのですが、有価証券報告書を読んでも判別できないですので見た目が悪くなるという意味でも悪影響です。
上場するような大企業は円高にもある程度耐えられると思いますが、中小企業(特に輸出関係の製造業)はしんどいのではないかと思っています。かなり淘汰される可能性もありますし、金融緩和下でそうした(少し業績の悪い)中小企業に積極的に貸している地銀、信金あたりの業績が傾き、そこから金融不安・景気減速が広がる可能性もあると思います。
次に、家計は企業業績の悪化に伴い賃金が減少する可能性がある他、物価が低迷するでしょう。
物価については、円高は輸入材の価格を低下させますが、特に原油の輸入価格の下落は様々な物の価格の低下に寄与しますから、物価の成長は止まるでしょう。
賃金については、近年賃上げの動きも見られますが、一方で働き方改革により残業代が減っている人も増加しているようで、あまり景気の良い話は聞かないような気がします。まぁ正社員であれば賃金カットはあってもそう簡単にはリストラされないでしょうが、リーマンショック時にも問題になったのは非正規雇用の雇い止めです。実は現在、リーマンショック前と比較すると、正社員の数はほとんど変わっていないにも関わらず、非正規雇用の労働者数は1.5倍程度になっています。主に男性高齢者と、中年以上の女性が労働参加したことによるところが大きいですが、いずれにせよ、企業は業績悪化時の固定費削減策としてまず非正規雇用労働者の雇い止めから始めますから、可能性としてはリーマンショック時よりも影響が大きくなる可能性も秘めています。ただ実際には円高で徐々に業績が悪化する形であれば、リーマンショック時よりも雇用調整も緩やかに行われる可能性が高いと思います。
財政については次回に続きます。