近年、高齢により判断能力が低下したときの対策として、
家族信託を利用を検討される方が増えています。
先日も、自宅兼店舗と未上場株式について、家族信託の提案をしました。
同様のケースにおいて、成年後見制度がありますが、
こちらは、本人に代わって財産を守ることが目的であり、原則、財産の処分や大幅な改変は認められないこととなっています。
その点、信託目的に逸脱しない範囲で、財産の処分や運用方法について受託者の裁量が認められる家族信託とは、似て非なるものといえます。
家族信託は相続のスキームとしては新しく、前例もそれほど多くないことから
利用にあたっては、司法書士や行政書士などの家族信託の専門家によるサポートは不可欠です。
当然、専門家へのフィーの支払いは生じますが、確実に対策することを考えたら、これも必要な支出といえるでしょう。
このほかに、信託契約書を公正証書にする場合には公証人手数料、信託財産に不動産が含まれる場合には登録免許税といった実費がかかります。
家族信託って、意外とお金がかかるんですね。。。
以前に知り合いの司法書士に聞いたら、初期費用でだいたい100万円ぐらいは見ておいた方がいいと言っていたのを思い出しました。
さらに、契約成立後も、受託者に支払う信託報酬や、受託者を監督する信託監督人に対する監督人報酬などの維持費用についても契約で定めている場合には、これらの支払いも必要になります。
そして、ここからが本題です。
賃貸用不動産を家族信託したことによってかかる費用の類は、確定申告の際の必要経費となるのか否か?
家族信託であっても、信託財産(賃貸用不動産)から生ずる利益(賃料収入)について、
その利益を享受する受益者は、確定申告をしなくてはいけません。
このとき、賃料収入から固定資産税や修繕費、広告宣伝費といった収入獲得のための必要経費を引いた残額が、その受益者の不動産所得となります。
所得が増えれば、当然、負担する税金も増えます。
この事実に直面したときに、ふと降りてくるのです。
信託にかかった費用は、必要経費にならないのかと。
ここで重要となるのが信託の目的です。
家族信託では、信託契約の際にその信託の目的を決めます。
必要経費となるためには、ここに「賃貸用不動産の管理および運用」といった文言の記載がないと、
「その収入を得るため直接に要した費用」という必要経費の性格に当てはまらないことになります。
さらに、支払先にも注意が必要です。
所得税法第56条では、次のように定めています。
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし・・・ (以下省略)
要するに、給与でも、賃借料でも、そして信託報酬であっても、同一生計の配偶者や親族に支払う対価は原則、必要経費とはならないんですね。
家族信託は、その仕組みと内容が、実現したい目的に合致したときには、大変有効な制度です。
現在は、司法書士や行政書士がメインの受け皿になっていますが、
私自身も、より多くのお客様にご満足いただける提案ができるよう、
インプット(学習)とアウトプット(実務)を重ね、業務の幅を広げていきたいと考えています。
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