相続の税務調査は、法人の税務調査とはだいぶ毛色が異なります。
法人の税務調査では、調査官が帳簿を確認し、税法に則っていない処理があった場合には、これを指摘します。
帳簿は基本的に法人が作成しますので、その内容について知りませんとは言えません。
ただ、相続の税務調査では、当の本人がおりませんので、相続人が知らないことも少なくありません。
しかも、調査能力で税務署を上回るということは難しく、調査が入るときは、たいてい税務署は何かを見つけた上でやってくることになります。
今回の事案でも、事前の調査により、相続人の知らない被相続人の預金口座が見つかりました。
本来納めるべき税金(本税)に加えて、10%の加算税と延滞税は取られるものの、それだけなら見つけてくれてありがとうなのですが、
今回はそれだけで済みませんでした。
預金以外にも定期金契約が1本、申告から漏れていることが、調査官の指摘から判明しました。
調査官「定期金契約も相続税の対象になることはご存知でしたか?」
相続人「はい。税理士さんから伺っていました。」
調査官「では、4本ある契約のうち3本しか申告しなかったのはなぜでしょう?」
相続人「うっかり通知を見落としてしまい、税理士さんにもお伝えしそびれてしまいました。」
戸惑う相続人に対し、調査官は事前に保険会社から取り寄せた定期金申請書のコピーを取り出します。
調査官「この申請書を書いていて、それでも気づかなかったんですか?」
相続人「当時はとにかく余裕がなくて、詳しい中身までは…」
調査官「意図的に申告しなかったとも考えられますが…」
相続人「えっ、そんな!!」
調査官「だとすると、重加算税(4割増)の対象になりますね。」
ちょっと待てーい!!
※高橋の心の叫び
高橋「うっかりって言ってるじゃないですか。4本のうち1本漏らしたら重加って、そんな処分あります?」
調査官「いやいや、客観的に見ると、そういう風にも見て取れるわけでして…」
それから議論は、終止平行線を辿り、
その日のうちに結論は出ませんでした。
帰り際、
調査官「明日、今日のやり取りの書面にしてまいりますので、内容に間違いがないことをご確認頂き、サインをいただければと思います」
この言葉が一体何を意味するのか?
ただ、私には、向こうサイドが完全にヤる気だということはわかりました。
(つづく)