仕事帰りのビルにある書店をひとまわり。


用事を済ませると、ビルのくだりにある無印良品へと寄った。


特に用もなく、下りエスカレーターへ向かう途中で、山積みになっている色とりどりのマフラーに目を奪われた。


オレンジ、グリーンとイギリスあたりの畑にありそうな、あたたかい色のチェックのマフラー。


僕の趣味ではないが、寒い冬に巻いてみたらきっとあたたかな気持ちになるだろう。


そんなことを考えながら、僕は家路へと歩みを進めた。





人は独りでは生きられない。


わかってはいるけれど、どうしたって計ってしまう一定の距離感覚。


あのあたたかい色を目にした瞬間、僕は隣にマフラーを巻いて笑いあう誰かの姿を思い描いていたのだ。


そしてそれは恋ではなく、家庭のあたたかさだろうと、掻き消えた脳裏でぼんやりと考えていた。


僕がおそらく手にすることのない、はるか向こう岸の風景。


心が動かなくなったのはいつのころか。


こんなにも笑えるのに、こんなにも泣けるというのに。


僕は侵入禁止の線引きを、自らに課してしまったのだ。


秋はもうその足元まで、やがて深く沈むのだろう。


冬の褥は静寂を望む。


ゆっくりと眠りゆく季節を待つのだ。