いじめられた側の気持ちは、いじめられた人にしかわからない。


 そして『学校の先生』には、優等生が多く、いじめられた経験が少ない。


 だから、いじめられた側の気持ちがわからないし、気づかないし、そもそも、理解しようという気もない。


 それなのに、『やっている気』になっているから、尚更タチが悪い。



いじめられ、更に学校の対応も悪く…


 奈良市立小学校の女児(11)が不登校になったのは、いじめに対して学校側が不適切な対応をとったためだったなどとして、女児と両親が市に対して330万円の損害賠償を求める訴訟を奈良地裁に起こした。提訴は1月18日付。


 訴状によると、女児は小学4年生だった2017年4月以降、主に同級生の女児3人から、転校を迫られたり、体育の帽子を隠されたりするいじめを受けた。


 両親は同年6月7日、担任の男性教諭(30)にいじめを伝えた。教諭は同日、いじめを受けた女児と、いじめに関与した女児に仲直りの指切りをさせ、「うそついたら先生とキスをする」と言うなどしたという。

 その後も難癖をつけられるいじめがあり、6月12日から女児は登校できなくなったとされる。


 市教委によると、不登校になった直後、校長や教頭ら学内関係者でつくる校内常設の「いじめ対策委員会」で調査を開始。6月中にいじめを認定し、関与した女児や担任教諭らへの指導をしたという。


 市教委が教諭に事情を聴くと、「キスをする」と発言したことを認めたという。市教委は「訴訟の内容については係争中のためコメントは差し控えるが、いじめを認知し、同校を指導している」としている。

(引用元 https://www.asahi.com/sp/articles/ASM353QJSM35POMB006.html)


 指切り程度で、いじめっ子がやめるかよ。

 キスどうこうも気が狂ってるが、それ以前に、いじめられた側の気持ちもわかっていないし、そもそも、理解しようという気がない。こんな学校、行かんでええわ。


 …って、なるじゃないですか。


 でも現実には、不登校って、そんなに甘いもんじゃない。



不登校の入り口


 私は今、ある親子から、相談を受けている。


 その子の場合は、2年前に女子3人からいじめを受けた。

 両親は子供から聞き取った内容を学校に伝え、学校側も、時間こそかかったものの事実確認をし、連携してその子を支えた。


 母親は子供の送り迎えを続け、多くの先生に見守られながら、その子は笑顔を取り戻し、その後の2年は、多少の疲れは見せたものの、落ち着いて通っていた。


 だが、あるイベント中に、加害児童がクラスを超えて接触してきたことで、被害児童がトラウマを呼び起こされ、フラッシュバックを起こした。PTSDだ。


 その夜、その子が口にした。

 加害児童は、児童会の役員になり、全校での合唱の伴奏者に選ばれ、活躍している。

 それが、被害児童からは『学校がいじめをした子を許した』『学校はいじめっ子の味方』に見える。

 でも『学校が決めたことは絶対』だから、文句も言わずに耐えていた。


 誰にも、両親にも言わずに、ひとりで。


 授業にも係活動にも積極的な加害児童を見て、学校側は『頑張っている』『いい子になった』『もう大丈夫』だと思ったのだろう。そうして、役を与えたのだろう。


 それを見た被害児童やその家族が、それをどう感じるかまでには思い至らなかったし、伝えたところで、『被害妄想』と受け止められる。


 結果、その子は不登校になった。

 自分の苦しみが理解されず、学校がいじめっ子を広く評価したことで、学校が味方ではないと感じて。


 両親は対応を諦めた。

  加害児童が目の前で評価されるのを見た我が子を、これ以上『学校』に傷つけられるのを嫌う……というよりも、もう、どうでもよくなってしまったのだ。


 学校は行ける日に行き、行きたくない日は、家で勉強すればいい。そう考えて、学校へ行くよう促すのをやめてしまった。


 ただ、だからといって、何もせず家にいるのはダメだ。決められた時間に、決められた場所に行き、決められた事をするのは、大人になっても続く。『学校へ行くこと』は『仕事へ行くこと』の練習なのだ。


 だからフリースクールを探し始めたのだが、これが、年単位での順番待ちだった。


「学校に行けない子がこんなにいるのに、この子達の学校って、何やってるの…」


 順番待ちに登録しながら、母親は、不登校の子の居場所を探すべく奔走している。



 学校のせいで、学校に行けなくなった。

 ならば、学校に居場所を用意してほしい。

 不登校のための欠席を、カウントしないでほしい。

 安全な進学先を、用意してほしい。


 その、両親の思いが、身勝手であるようには思えない。


 指切りひとつで許せると思っているあたり、いじめられた側の心の傷の深さをナメている。

 いじめられた子は、いじめに遭ったことのある、人の心のある先生に、大切に育ててほしいなあ……。