車の自動運転プログラムの為なのだと思う。

某メーカーから、アンケートのメールをもらった友人から、このような質問をされた。

 

車のブレーキが効かなくなりました。

まっすぐ進むと、あなたが崖から落ちてしまいます。

右に避けると、お年寄りを轢いてしまいます。

左に避けると、子供を轢いてしまいます。

どうしますか?

 

緊急時に、AIにどう判断させるかを決める為の質問なのだろうが、

 

これ、正解ないだろ。

悩む…。

 

 

 

私の答え

 

 

とりあえず、自分が死ぬのは嫌だ。

崖がどのくらいの高さかとか、エアバッグが開くかとか、死なない程度の怪我で済むならとか、いや、でも中途半端に生き残ったら…とか、色々考えてしまったが、とにかく痛いのは嫌だし、死ぬのはもっと嫌だ…。

 

かといって、右に避けたら、お年寄りを轢いてしまう。

お年寄りなら、亡くなってしまう確率は高い。

転んで頭を打っても、大ごとになってしまったりするのだ。

しかも、せっかく長生きをしたのに、事故なんかで亡くなるなんて、理不尽すぎる。

 

でも、左に避けて、子供を轢くのだって理不尽だ。

子供の生命力なら、あるいは生き残るかもと思ったが、子供の未完成な身体では、簡単に亡くなってしまうかもしれない…というのもある。

何より、子供が痛い思いをするなんて、可哀想だ。

 

では、一番理不尽でない方法は?

 

車のブレーキが故障した。

誰のせいだ?

メーカーのせいだ。

製造時に不備があったかもしれないし、点検や整備が不足していたかもしれない。

 

あれ?

でも、その車を選んだのは誰だ?

私だ。

 

購入時に、安全性の確認が足りなかったり、きちんと整備に出さなかったかもしれないし、ブレーキが壊れるような運転をしていたかもしれないのは……私だ……。

 

少なくとも、右を歩いているお年寄りや、左を歩いてる子供が、ブレーキが壊れた私の車に、何も関与していないのは確かだ。

 

故に、愛や正義や倫理、そして勇気を友とする私が出すべき答えは、

 

「まっすぐ…進む……かな……」

 

ここで私は、ミスを犯した。

思考の過程を、全て口に出していた。

そして、友人の背後には、その、高校生の娘がいた。

 

友人が、ちらりと娘を見た。

同時にその娘(ギャル)が、ハッ!と鼻で笑うというか、吐き捨てるというか……、なんか、そんな感じの、超怖い息を出して、立ち上がった。

 

娘「やっぱ、大人ってゲスいわ。ありえないね」

 

そして、説教が始まった。

 

 

 

女子高生の答え

 

 

娘「まず、悩むってとこからありえない」

 

え、そこからか?

誰でも悩まないか?

だから、こんな質問があるわけだし。

 

友人をチラ見すると、苦笑している。

 

友「俺も同じこと言われた」

私「だよね…。だって、死んじゃうかもしれないんだよ?」

 

女子高生は、うんざりした顔で、友人の隣に座る。

テーブルを、指でトントン。

説教モードである。

 

娘「自分が死んじゃうかもしれないなら、人、轢いてもいいの?」

 

え…、だって、仕方なくない?

とは、言えない。

私も、そこで悩んだ。

 

でも、だからって、

 

私「自分が死ぬのを、すんなり選ぶのは難しい…」

娘「死ぬとは限らないじゃん」

 

え?

その発想はなかった。

 

友「でもさ、崖だよ?」

私「基本、死ぬでしょ」

娘「子供に諦めるなとか言う割に、最初から諦めてるよねw 大人ってwww」

 

真理である。

ええ、色々諦めながら、大人になりました…。

 

友「じゃあさ、どうすんの」

娘「生き残る方法を考える。後部座席に移るとか、頭を守るとか、窓から外に出るとか、なんかする」

 

おお……!

恥ずかしながら、まったく思い浮かばなかった…。

 

娘「少なくとも、右とか左とか考えて、人に怪我さすのはないわ」

 

大人を論破する為に、口先で言ってるだけの空気はない。

この子なら、崖に向かってアクセルすら踏みそうだ。

 

黙りこくった私と友人に、ニヤニヤと笑う女子高生。

 

娘「弟達に聞いてみる?」

 

大声で、双子の弟の名前を呼ぶ。

ドタドタと足音がし、姉の命令は絶対であるかのように、左右にビシッと立つ小学生。

 

姉は弟達に、同じ質問を投げかけた。

 

 

 

小学生の答え

 

 

双子というのは、すごい。

本当に、言葉がシンクロする。

 

兄弟「え、まっすぐ」

 

即答だった。

 

私「でも、まっすぐ行ったら、崖から落ちちゃうよ?」

友「そうだよ、死んじゃうかもよ」

 

双子、顔を見合わせるが、

 

兄「でも、人に怪我させちゃダメだから」

弟「お年寄りと、小さい子は、大事だから」

 

当たり前だし、なんでこんな質問をされたのか、ちょっとワカラナイという顔。

彼らには当たり前の事すぎて、

 

兄弟「ねえ、そんだけ? 戻ってもいい?」

 

もう、この話に飽きている。

そして、友人ではなくて、姉の方に許可を取る。

家庭内の勢力図が垣間見える。

 

娘「だよね。戻っていいよ」

 

はーいと言って、帰る弟達。

ドヤ顔で私達に向き直る女子高生。

 

娘「そんなわけで、人を傷つけて自分が生き残ろうなんて、鬼畜の所行です。ちなみに」

 

おもむろにスマフォを出し、画面を見せる女子高生。

 

娘「彼氏の答えです」

友「ちょ、彼氏⁉︎」

娘「言ったよ。パパ聞いてなかったけどw」

友「え、いつ⁉︎」

 

動揺する友人を尻目に、スマフォの画面を見る。

ピンクの壁紙のLINE画面で、ワンピースのゾロのアイコンの彼氏が、

彼『まっすぐw しゃーないしょwww

と答えている。

 

しゃーないのか…!

会ったことないけど文体的にチャラそうな君でも、しゃーないしょwwwと、崖に突っ込むのか……!

 

友「でもさあ、親としては、卑怯でも生き残ってほしいわ…」

娘「うっわw 人殺して生き残っても、残りの人生楽しめないわw 死んだ方がマシwww」

 

立ち上がる女子高生。

 

娘「あたしはいいけど、弟達に、それ言わないでよね。男に卑怯さ、いらないわ」

 

見下ろされ、置いていかれる我々……。

 

 

最近の若者はとか、今の子供はとか、ゲームや漫画の影響がとか、色々言われてるが、今の子供達の方が、我々よりもよっぽど倫理観があるように見えるのは、なんなんだろう。

 

今のままでもこうなんだから、道徳教育の見直しや科目化なんて、しなくてもいいんじゃなかろうか。

 

道徳教育が必要なのは、むしろ我々親世代な気がしてきた。

それとも私と友人の倫理観が、自己中心的でクズなだけなのだろうか。

 

道徳って、なんなんだろう…。