監督の指示はあった。

いや、指示というよりも、命令だ。


試合への出場と引き換えに、危険なプレイをした日大選手は、最後まで、監督を悪く言うことはなかった。


可哀想で仕方がなかった。



選手は謝罪を止められていた


今回の記者会見は、加害者になってしまった宮川選手から、日本記者クラブに申し込んだものだった。


目的は、謝罪と、反則行為の指示があった事を、明らかにする事。


「顔を出さない謝罪はないと会見を決意」するに至る経緯は、宮川選手を監督やコーチが、その父親をアメフト部OBが押さえつけていたと取れる、卑劣きわまるものだった。


違反行為があった5日後の、5月11日。

宮川選手は、親と共に、相手QB選手に直接謝罪したいと、日大の内田前監督に申し出た。

だが、それを止められ、代理人弁護士に相談するに至っていた。


ここで弁護士への相談を選んだ、宮川選手の父親は、至極まともで賢い人だ。

ここに至るまでに、この父親は、アメフト部のOBにも呼び出されている。


選手を監督やコーチが脅し、我が子を守ろうとする父親を、OBが脅し。

それだけで、日大アメフト部の体質が、透けて見える。


これは、日大体育会の体質なのだろうか。

それとも、日大自体の体質なのだろうか。


いずれにしても、この少子化で大学定員割れが相次ぐ時代に、日大は大きくイメージを下げた。

少なくとも、

「ここで思いっきり、好きなスポーツに打ち込みなよ!」

と言える環境ではないことはわかった…。


ここに子供を入れる人は、間違いなく減るだろう。



宮川選手が追い詰められていく過程


反則を指示されていた、宮川選手。

本人の説明をまとめれば、こうだ。


4月22日・29日

スターティングメンバーで出場。


5月3日

この頃、監督やコーチから

「やる気が足りない、闘志が足りない」

と指摘を受けていた。


この日の実戦形式の練習でのプレーが悪かったということで、初めて、コーチから練習を外される。


その後、全体のハドルの中で、監督から

「宮川なんかはやる気があるのかないのか分からないので、そういうやつは試合に出さない、やめていい」

井上コーチから

「おまえが変わらない限り練習にも試合にも出さない」

と言われる。


5月4日

当時選抜されていた今年6月に中国で開催される第3回アメリカンフットボール大学世界選手権大会の日本代表について、練習前に監督から

「日本代表に行っちゃ駄目だよ」

と、辞退するように言われる。

監督に理由を確認することはとてもできず、

「分かりました」

と答えた。


同日、未経験の1年生がいた為、副キャプテンがタックルをし、宮川選手が受ける形でメニューをやってみせるため、宮川選手がダミーを持つと、コーチから「なぜ最初にダミーを持つんだ」と言われ、グラウンド10周走らされる。


その日の実戦練習は練習前に井上コーチに確認したところ、

「宮川は出さない」

と言われ、外される。


5月5日

この日も実戦練習を外される。

練習後、井上コーチから、

「監督におまえをどうしたら試合に出せるか聞いたら、相手のクオーターバックを1プレー目でつぶせば出してやると言われた。

クオーターバックをつぶしに行くんで僕を使って下さいと監督に言いに行け」

と言われる。


続けて井上コーチから、

「相手のクオーターバックと知り合いなのか、関学との定期戦がなくなってもいいだろう、相手のクオーターバックがけがをして秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう、これは本当にやらなくてはいけないぞ」

と念を押され、髪型を坊主にしてこいと指示される。


ポジションの先輩から井上コーチに、

「宮川に、アラインはどこでもいいから1プレー目からクオーターバックをつぶせと言っとけ」

と言われた旨を告げられる。

相手をつぶすくらいの強い気持ちでやってこいという意味ではなく、本当にやらなくてはいけないのだと思い、追い詰められて悩む。


5月6日 試合当日

悩んだ末、これからの大学でのフットボールにおいて、ここでやらなければあとがないと思い、試合会場に向かう。


だが、試合のメンバー表に宮川選手の名前はなかった。


その後の、試合前のポジション練習時、井上コーチに確認したところ、

「今言ってこい」

と言われ、宮川選手は監督に対して直接、

「相手のクオーターバックをつぶしに行くので使って下さい」

と伝えた。


監督から

「やらなきゃ意味ないよ」

と言われる。


戻った宮川選手は、井上コーチに監督と話をしたこと、監督からやらなきゃ意味ないよと言われたことを伝え、さらに井上コーチに対して

「リードをしないでクオーターバックに突っ込みますよ」と確認。


井上コーチから

「思い切り行ってこい」と言われる。

このことは、同じポジションの人間は聞いていたと思われる。


試合前の整列の時、井上コーチが近づいてきて、

「できませんでしたじゃ済まされないぞ、分かってるな」と念を押される。


そうして、あの危険行為に至った……。



その後の、日大の不誠実ぶりは、報道されている通りだが、何よりも罪深いのは、日本代表に選ばれるほどの宮川選手に、もうアメフトはしないと言わせた事だ。


高校生の頃に始めたアメフトが楽しくて、大学でも部に入ったと、宮川選手は言っていた。


そんな彼が、もうアメフトは辞めると言った。

そういう覚悟で、自ら晒し者になり、あの謝罪会見に臨んだ。


日大を辞めると言ったように、私には聞こえた。