先日、友人が勤める店をのぞきに、原宿の竹下通りに行ってきた。20数年ぶりだ。
店に顔を出したが、忙しそうだったので、休憩時間になるまで、竹下通り入口のマクドナルドで待つことにした。
1階の席は出入りが激しそうなので、地下へ。
そこが、どのような場所なのかも知らずに…。
あれですよ、原宿の、虹色のでかい綿菓子のお店、リニューアルしますからね?
トッティキャンディファクトリー、お父さん達、行かされますよ?
ぐったりとソファーにもたれ、眠りこけたり。
無表情でスマフォを眺めたり。
同じ雑誌を何周も読み返したり。
そこは、娘を待つお父さん達の、吹き溜まりだった。
女性と違い、『娘の足になって原宿まで車を出し、いつかもわからない買い物の終わりを、100円のコーヒー1杯で、ただひたすら待つ』という同じ境遇にあっても、お父さん同士は喋らない。
そこは、静かな空間だった。
皆、粛々と娘を待つ。
だが、その静寂を、時々破る者が来る。
小学校4〜5年生くらいの、『ちゃお』の広告にいそうな3人の女の子が、私の近くの席のお父さんを起こした。
「パパ〜、起きて、起〜き〜て〜!」
(まだ)微笑ましい。
眠い目をこすりながら、起きるお父さん。
「◯◯ちゃん、お買い物終わった?」
優しそうなお父さんだ。
「お小遣い終わっちゃった。ふたりとも1万円持ってきてたけど、◯◯だけ5千円だったんだよ。だからね…」
おお…おねだりだ……。
皆まで言わず、上目遣い。
怖い。この年齢から、女子はこれできるのか。
てか、小学生に1万円て、すごいな。
お友達の前じゃ、お父さん、断れないだろ…。
「ママから、あげちゃダメって言われてるよ。あげられないよ〜」
「えぇ〜! ◯◯のお年玉からでいいから〜!」
「3人でおそろいのスクイーズ買いたいのに、◯◯だけお金なくなっちゃったんだよ?」
「◯◯ちゃん、パパ優しいって言ってたのに…」
お友達からの援護射撃。
「しょ〜がないな〜」
お父さん、5千円札を出す。
「ありがと〜!」
「お買い物、あとどのくらいかかる?」
「わかんな〜い!」
キャッキャしながら出て行く娘達。
お父さんは、その背中を見送った後、テーブルにうつ伏せた。
顔は似ていなかったが、喋り方が似た二人だった。
「だからさあ! 使っちゃったの! わかるでしょ!」
女の子の怒声に振り返ると、ノートパソコンを開いたインテリ風なお父さんの前で、小学生以上ギャル未満な、韓国人アイドル的なメイクの女の子が、拳を握って訴えている。
「俺は約束守ったよ? お前も守りなさい」
毅然として言うお父さん。
おお…、かっこいい……!
俯いて黙ってしまう女の子。
一人でいるが、友達は、どこかで待っているのだろうか。
長い沈黙の後、絞り出すような声で言う。
「……じゃあさ、次は、何を約束すればいいの」
「わかるだろ?」
何か、おうちルールがあるのだろうか。
女の子が黙る。
皆がスマフォを見るふりしながら、寝たふりしながら、固唾を飲んで見守る。
「……5ページやる」
悔しそうな娘。
「科目」
冷たく言い放つお父さん。
「数学……」
カサッと、お父さんが、テーブルに何かを置いた。
横目で盗み見る私。
3000円だ。
娘、ちょっとびっくりしたように、
「……500円、多くない?」
数学の問題集かなんかを、1ページ500円ルールか。
5ページなら、2500円のはずだが……、
「原宿だからな」
カッコイイ……!
「ありがと……」
娘がデレた!
反抗期バリバリの娘が、500円でデレた!
いつもは厳しいのか?
500円サービスはかなりボーナス感があるのか⁉︎
娘が3000円を財布に入れて、照れ臭そうに、ペコリと頭を下げる。
最初はビビッたが、イイ子だ。店内の空気が緩む。
カッコイイ…俺もこんな父親に……と、店内のお父さん達の誰もが思った(であろう)次の瞬間。
「母さんには内緒だぞ」
惜しいーーーーー!!!!!!
ダメじゃん母さんの顔色うかがっちゃ!
でもアレか?
娘と二人だけの秘密がいいのか⁉︎
え⁉︎ そんなにご機嫌取らなきゃダメ⁉︎
そうなの?
反抗期ってそうなの⁉︎
もう、何を信じたらいいかわからない。
お小遣いと勉強が引き換えってどうなのとか、いろんな疑問は置いといても、お父さん…カッコよかったのに……。
黙々とスマフォをいじっているお父さんの所に、紙袋をいくつも持った女子高生が来た。
ナチュラルメイクに、お嬢さんぽい服。
このくらいになると、さっきの中学生のような、無理な背伸びもしないのか。
「ごめん、長い?」
「長いw」
二人とも、ニコニコというより、ニヤニヤしている。
仲良しっぽい。友達っぽい。対等っぽい。いいな。
ドサドサと、お父さんの向かえの席に、紙袋を置く。
お父さん、荷物番か…。
「△△が、バッグ決まんなくてさ。もーちょい待ってやってw」
「△△ちゃん、いっつもじゃんw お前決めてやってw」
おお、娘のお友達関係を把握してるのか!
お母さんならともかく、お父さんがコレって、現代型なんじゃないか?
「無理しょw これ食って待っててw」
娘、バッグから、カラフルなカップを出す。
三段、三色の綿菓子。
そう、トッティキャンディファクトリーのやつだ。
「持ち込みダメだし、おっさんこんなの食わねーしw」
「甘いの好きじゃんw んじゃ、あとちょいねw」
身軽になった娘が、颯爽と去る。
見送ってから、しょ〜がねぇな〜〜wという表情で、めちゃくちゃ嬉しそうにカップを開けて、綿菓子を食べ始めるお父さん。
そうか…、女子高生ともなると、いちいち親に反抗したりしないのか…。
荷物は持たせても、金はせびらないのか…。
彼女なりに、足にして待たせているお父さんを気遣って、原宿っぽい物を買って来たのだろう。
これは、めんどくせぇな〜と思いながら、足になっちゃうわ…。
娘さん、末恐ろしいですわ…。
と、いうわけで、様々な年齢の女子とお父さんを見たわけだが、原宿にいるのは『お父さんに連れてってもらおう』という女子と、『めんどくさいけど、まあいいか』なお父さん。
結局はみんな仲良しで、なんか、ほっこりした。
でも、女子はやっぱり、ちょっと怖い…。
