中日春秋
2014年8月4日
 <凄(すご)いという字には/妻がいる、女がいる/子育て、親の介護/夫の介護/女はやっぱり凄い>。河田日出子さんという方がお書きになった『俺はこわれちゃったんだよ』(市井社)は認知症になった夫を介護した八年間を「五行歌」で綴(つづ)る
▼認知症の肉親やパートナーを介護した経験がある方ならその歌のひとつひとつに自身の苦労や思いが重なるだろう。<四十六回目の/結婚記念日よ/と言っても反応がない/思い出を共有できない/淋しさ>。介護も辛(つら)いが、身近な人間と過去を笑って語り合えない、心が通わぬ生活のなんと味気ないことか
▼半面、病気によってその人の飾りのない心が時折のぞくものか。<判(わか)らない言葉ながらも/おまえが一番/好きなのだと言う夫/正気だったら/言うまい><痴呆(ちほう)の夫と/日に何度も/抱きあって/背中を/撫(な)であう>
▼昨年の日本人男性の平均寿命が八十歳を超え、八〇・二一歳になった。悪い話ではないが、大切なのは介護を受けずに生活できる「健康寿命」をいかに延ばすか
▼特に男性である。平均寿命の男女差は六・四〇歳で前年からわずかながら縮まったが、その差はやはり気になる。先に弱っていく男性を女性が介護する
▼<夫のために/時間を/費やす/日々/これでよし>。きっぱりとした詩だが、いつまでも女性の「凄さ」にすがっているわけにはいくまい。