中日春秋
2014年5月23日
 SFの巨匠アイザック・アシモフが、二十一世紀を舞台にした小説の中で「ロボット工学の三原則」を明示したのは、一九四〇年代のことだ
▼ロボットの人工頭脳に刻まねばならぬ三原則のうち、最も重要な第一条とは次のようなものだ。<ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない>
▼しかし時の政府は極秘裏に、この大原則の一部を変えて刻んだロボットを世に送り出す。力も知力もまさるロボットが人間に歯向かいうる事態に、どう対処するか…そんな短編も『われはロボット』(早川書房)に収められている
▼「三原則」が示されてから、七十年余。国連欧州本部では先週、自らの判断で敵を殺す「完全自律型殺人ロボット兵器」の規制について議論する初の専門家会合が開かれた。その手の兵器が、近い将来に開発されるとの危機感からだ
▼会合を前に、ノーベル平和賞の歴代受賞者らは「殺人ロボットは戦争を全面的かつ永遠に変貌させ、新たな軍拡競争を招く」との声明を出して、殺人ロボットの開発を早々に禁止するべきだと訴えた
▼そもそも自律型ロボットが罪を犯したら、誰が責任を取るのか? 管理者か、ロボットの製造業者か? この難問に答えられぬようならば、ここはやはり「ロボット工学三原則」の出番ではないだろうか。