中日春秋
2014年3月19日
 ソ連崩壊直後の経済混乱はすさまじく、年1000%を超すインフレが起きた。当時、ウクライナでドルを現地通貨の小額紙幣に両替したことがあるが、渡されたのは、札束の山。ジュースやらを買うたび札束をポン。お大尽気分を味わいつつ、歯止めのきかぬインフレの恐ろしさを見た
▼史上最悪ともされるインフレは、一九四六年にハンガリーで起きた。月のインフレ率が10000000000000000%。何と京の単位である。天文学的なインフレだ
▼もっとも本当の天文学上のインフレは、桁違いだ。宇宙創成直後に起きたとされるそれは、一兆分の一の一兆分の一のさらに百億分の一秒ほどの時間に、ウイルスが天の川銀河より大きくなったほどというから、気が遠くなる
▼だが、この「宇宙インフレーション理論」を世界で初めて提唱した科学者の一人・佐藤勝彦さんは、さらに想像を絶する科学的予言にたどり着いた
▼あまり奇想天外なので、計算間違いがあるのではないかと確認を重ねたが、理論から導き出される答えは、「宇宙は多重発生を繰り返す」。宇宙は一つではなく、次々生まれるということだ(『宇宙は無数にあるのか』集英社)
▼提唱から三十年余、宇宙のインフレ理論が、ついに観測で裏付けられたという。ただ残念ながら、「ほかの宇宙」は私たちの住む宇宙からは観測できないらしい。