中日春秋
2014年2月27日
 フランスの詩人ボードレールは、仏絵画界の巨匠ドラクロワの逝去にあたり、こう悼んだという。<ドラクロワのパレットほど細心の注意を払い繊細に整えられたパレットを見たことがない。それはまるで注意深く取りそろえられた花束のようだ>
▼ドラクロワの死から四年後の一八六七年に、四十六歳で没したボードレールがもう少し長生きし、この画家のパレットを見たら、どう評したろうか。新印象主義を代表するフランスの画家ジョルジュ・スーラ(一八五九~九一年)のパレットもまた繊細この上なく、光の花束のような美しさを持つ
▼スーラはパレットでほとんど色を混ぜなかったという。青や黄色に混ぜるのは白だけ。濁りのない色でカンバスにひたすら点を打っていく
▼青と黄色を混ぜて緑にするのに、スーラはパレットではなく、私たち自身の目を使った。彼は当時最新の理論だった神経生理学に基づく色彩論を学び、それを芸術にしてみせた
▼モネら印象派から新印象主義のスーラたち、彼らに触発されたゴッホ、そして抽象絵画の創始者モンドリアン…。愛知県美術館で始まった展覧会『点描の画家たち』は、十九世紀から二十世紀初頭にかけての色彩をめぐる革命絵巻のようだ
▼彼らの足跡をたどるのに必要なのは、私たちの目というパレット。スーラたちはそこに、光の花束を差し出してくれるはずだ。