中日春秋
2014年2月15日
 チェコの作家カレル・チャペックに言わせれば、二月は油断ならぬ月である。名著『園芸家12カ月』(中公文庫)で<不機嫌なことと、変わりやすいことにかけては、断然ほかの月よりうわてだ>と書いている。<昼間は甘言をもって灌木(かんぼく)の芽をおびき出し、夜になるとその芽を火あぶりにする>
▼雪国ではそれどころではなかろうが、立春の前の陽射(ひざ)しにせかされるように、鉢の植え替えをした。バラにアジサイ…。鉢の中にびっしり張った根をほぐし、新しいふかふかの土を入れる。木から「ああ、さっぱりした」という声が聞こえた気がした
▼よく見れば、アジサイの芽はぷっくりとふくらみ、バラの堅い芽も春への準備を始めていた。それが先週末に続いての大雪。チャペックの言うように、二月は<一方の手でわたしたちをさすりながら、もう一方の手でわたしたちの鼻の頭をはじく>ようだ
▼しかし「雪は暖かいふとん」らしい。群馬県北部で植物写真を撮り続ける埴沙萠(はにしゃぼう)さんによると、積雪が一センチでもあると、大気が氷点下一〇度でも、地下一センチの温度は零度ほど
▼しかも柔らかく積もった状態なら、三十センチの積雪であっても、その下は本が読めるほどに明るいのだという(『足元の小宇宙』NHK出版)
▼木の芽も、今ごろふかふかの雪のふとんを喜んでいるかもしれない。<一吹雪春の隣となりにけり>前田普羅(ふら)。