中日春秋
2014年2月8日
日本の近代建築研究の第一人者で、三日に六十八歳で逝去した鈴木博之さんが、ある企業から、「数百年残り続けた構築物の調査を」との依頼を受けたのは、東日本大震災の三十年前のことだったという
▼世界各地の建築遺産などを調べ、報告書を書いた。その時、数世紀の時に耐えうる建造物のありように気づいたと、本紙への寄稿で記していた
▼一つは、大理石など持ち去られやすい高価な材料や、維持に手間が掛かる最先端の技術で造るのは、だめだということ。泥や普通の石などありふれた材料で大きく造るのが肝要で、ピラミッドや古墳がその例だ
▼もう一つは、宗教に代表されるように、人々が世代を超え、それを守る熱情を持ち続けるシステムがあること。その好例の一つが、伊勢神宮だ
▼大震災の教訓を鈴木さんは<自然への畏敬の念、そこに込められた鎮魂の思いなくしては、今後数百年にわたる町の再生はあり得ないのではないか>と論じた。いくら私たちの生活が技術発展の上に立とうとも、自然の力をしかと感じて生きねばならないのだと
▼さて、鈴木さんの三十年余前の報告書を手にした企業はどう受け止めたろうか。この企業、実は原発から出る放射性廃棄物に関連する会社で、その長期貯蔵のヒントを求めていたそうだ。まさか核の力を信奉する「宗教的システム」が必要と考えた訳ではなかろうが。
2014年2月8日
日本の近代建築研究の第一人者で、三日に六十八歳で逝去した鈴木博之さんが、ある企業から、「数百年残り続けた構築物の調査を」との依頼を受けたのは、東日本大震災の三十年前のことだったという
▼世界各地の建築遺産などを調べ、報告書を書いた。その時、数世紀の時に耐えうる建造物のありように気づいたと、本紙への寄稿で記していた
▼一つは、大理石など持ち去られやすい高価な材料や、維持に手間が掛かる最先端の技術で造るのは、だめだということ。泥や普通の石などありふれた材料で大きく造るのが肝要で、ピラミッドや古墳がその例だ
▼もう一つは、宗教に代表されるように、人々が世代を超え、それを守る熱情を持ち続けるシステムがあること。その好例の一つが、伊勢神宮だ
▼大震災の教訓を鈴木さんは<自然への畏敬の念、そこに込められた鎮魂の思いなくしては、今後数百年にわたる町の再生はあり得ないのではないか>と論じた。いくら私たちの生活が技術発展の上に立とうとも、自然の力をしかと感じて生きねばならないのだと
▼さて、鈴木さんの三十年余前の報告書を手にした企業はどう受け止めたろうか。この企業、実は原発から出る放射性廃棄物に関連する会社で、その長期貯蔵のヒントを求めていたそうだ。まさか核の力を信奉する「宗教的システム」が必要と考えた訳ではなかろうが。