中日春秋
2013年10月8日
通勤の道すがら、通るのを楽しみにしている小さな雑木林がある。住宅地として開発され、見る影もなくなった里山の面影を伝えてくれる、ささやかな欠片(かけら)のような木立だ
▼しばらく前までは、風もないのに、コロコロ、カンコロと木琴を鳴らすような音がした。コナラやクヌギの木からドングリが枝に当たりながら落ちる調べだ。<どんぐりがあのねあのねとおちてくる>忽邦操子
▼桃栗三年柿八年といわれるが、ある種のナラは発芽してから初めてドングリを付けるまでに丸々五十年もかかるという。ビル・ローズ著『世界史を変えた50の植物』(原書房)は、欧州の繁栄を支えた木の一つにオウシュウナラを挙げている
▼一大帝国を築いたローマ人は巨木となるナラで砦(とりで)を築き、この木から採れるタンニンで皮をなめし、炭で金属を精錬した。大英帝国もこの木で軍艦を造り世界の海の覇権を握った。トラファルガー海戦で有名なネルソン提督の旗艦ビクトリー号には、五千本ものナラが使われたらしい
▼そんな使い勝手のいい木だからこそ乱伐され、特に戦争があると多くの森が無残に消えていった。英国でナラの森が息を吹き返してきたのは、ここ十年かそこらのことだという
▼<団栗(どんぐり)の寝ん寝んころりころりかな>は一茶の句。ドングリたちが春に備えて、その尖(とが)った頭から根を伸ばし始めるのももうすぐだろう。
2013年10月8日
通勤の道すがら、通るのを楽しみにしている小さな雑木林がある。住宅地として開発され、見る影もなくなった里山の面影を伝えてくれる、ささやかな欠片(かけら)のような木立だ
▼しばらく前までは、風もないのに、コロコロ、カンコロと木琴を鳴らすような音がした。コナラやクヌギの木からドングリが枝に当たりながら落ちる調べだ。<どんぐりがあのねあのねとおちてくる>忽邦操子
▼桃栗三年柿八年といわれるが、ある種のナラは発芽してから初めてドングリを付けるまでに丸々五十年もかかるという。ビル・ローズ著『世界史を変えた50の植物』(原書房)は、欧州の繁栄を支えた木の一つにオウシュウナラを挙げている
▼一大帝国を築いたローマ人は巨木となるナラで砦(とりで)を築き、この木から採れるタンニンで皮をなめし、炭で金属を精錬した。大英帝国もこの木で軍艦を造り世界の海の覇権を握った。トラファルガー海戦で有名なネルソン提督の旗艦ビクトリー号には、五千本ものナラが使われたらしい
▼そんな使い勝手のいい木だからこそ乱伐され、特に戦争があると多くの森が無残に消えていった。英国でナラの森が息を吹き返してきたのは、ここ十年かそこらのことだという
▼<団栗(どんぐり)の寝ん寝んころりころりかな>は一茶の句。ドングリたちが春に備えて、その尖(とが)った頭から根を伸ばし始めるのももうすぐだろう。