中日春秋
2013年9月6日
 米国の大統領は、その決断次第で、世界中の人々の運命すら変えかねない力を持つ。世界最強の軍の最高司令官でもある人物が、こう考えているとしたらどうだろうか。「大統領が行うことなら、それは不法ではない」
▼これはニクソン元大統領が実際に口にした言葉だ。歴史的な告白を引き出したのが、先日、七十四歳で急死した英国のテレビ司会者デービッド・フロスト氏だ
▼ウォーターゲート事件で辞職した三年後に、元大統領はフロスト氏のテレビインタビューに応じる。「トークショー司会者なら与(くみ)しやすし」と考えてのことだったが、ニクソン氏は追い詰められ、ついに心情を吐露する。「私は米国民を失望させた。その重荷を一生背負っていく」
▼その息詰まるやりとりは、四年前に公開された映画『フロスト×ニクソン』で再現されたが、真実が解き放たれる瞬間に居合わせた番組プロデューサーは「出産に立ち会ったような思い」がしたそうだ
▼そんなフロスト氏が自ら会心の出来と考えていたのは、ジョン・レノンにこう迫ったインタビューだという。「ヒトラーがチェコに進軍した時に人々が『平和と愛を』と言ったとしても、何も変わらなかったのでは?」
▼ジョンは答えた。「うん、でもヒトラーがこの世に生を受けた瞬間から、みんなが彼に『平和と愛を』と言い続けていたら、どうだったろう」