中日春秋
2013年9月2日
 富士山の噴火史上、最大規模といわれる宝永噴火(一七〇七年)は、南東斜面に出来た火口が十六日間、火山灰を吐き出し、降灰被害が農民を苦しめた
▼江戸幕府は被災地を直轄領に編入し、復興に乗り出す。資金調達のために臨時税を全国に課す「諸国高役金(たかやくきん)令」を発令、洪水を予想し治水工事の一部を外様大名らに担当させた
▼ところが、幕府の歳入の四割に当たる金が集まったにもかかわらず、実際に被災地救済に使われたのは一割程度。勘定奉行の言い分通りでも、三割余りだった
▼財政難だった幕府の歳入の穴埋めに大半が流用されていた。治水工事を請け負ったのも江戸の業者ばかりだった(小山真人著『富士山』)。最近、よく聞く話と同じだ。復興予算の流用はこの国の政治のDNAに刻まれているようだ
▼自治体などの基金を通じ流用された東日本大震災の復興予算のうち、未執行分の七百十八億円が返還されるが、すでに一兆円超が執行され返還額は一割に満たない。二〇一三年度予算の復興特別会計から二千億円以上が被災地と関係ない事業に充てられていることも判明した
▼二〇一四年度予算の概算要求は過去最大額だった。消費税増税が未定で歳出額の上限を定めなかったためだが、族議員が跋扈(ばっこ)する古い政治に先祖返りした感もある。増税して国民に痛みを求める資格が政治にあるのか問いたい。