中日春秋
2013年8月31日
 夏休みは、もう終わり。なのに宿題がまだ終わっておらず、机に向かいながら、大きな「?」が頭に浮かんでいる子もいるだろう。「子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?」
▼この疑問をそのまま書名にした本(日経BP社刊)で、生物学者の福岡伸一さんは、「そもそも人間とは」という原点から、この問いに挑んでいる
▼人類誕生をめぐるこんな説があるらしい。ある時、サルの中に成熟が遅い、言い換えれば、子ども時代がとりわけ長いサルが突然変異で現れた。普通に考えれば、不利な存在のはずなのに、なぜかそのサルが繁栄するようになった
▼食料調達や縄張りなど「大人の問題」に悩まされず、好奇心に従っていろいろ探ったり、遊びで新しい技を身に付けたりする時間がたっぷりあったために、脳の発達が促されたというのだ
▼長い子ども時代は人間だけに与えられた特権であり、その中で「世界の成り立ち」や「自分の存在意義」などという「大きな問い」を発明した-と、福岡さんは指摘している。そして、そんな人類がたどってきた進化の道を自分で踏みしめてみることこそ、勉強なのだと
▼いやはや、「子どもはなぜ勉強しなくてはならないのか?」というのは、とてつもなくスケールが大きい難問だ。しかし夏休みが終わっても、大人になっても考え続ける価値のある素晴らしい疑問でもある。