中日春秋
2013年7月15日
 十数年前、ある中学校の公民の教科書に誤記が見つかった。豪雪地帯にある新潟県中里村(当時)が制定した「雪国はつらつ条例」を「雪国はつらいよ条例」と紹介していたのだ
▼雪を克服、利用して、親しむ施策を進め、はつらつとした活力ある村づくりを目指す。そう高らかにうたっていた条例が、寅さん映画のような名になっていても教科書検定を素通りしていた
▼雪国暮らしの大変さを思えば、つらいよ条例でも違和感がなかったということか。中里村は二〇〇五年に合併で消滅し、はつらつ条例もなくなってしまったのは残念だ
▼町おこしや村おこしに熱心な自治体は時にユニークな条例をつくる。最近では、地元の酒で乾杯を勧める条例だろう。佐賀県や京都市、石川県白山市など、酒どころの自治体が「乾杯条例」を相次いで制定している
▼福島県南会津町には、「花泉」「男山」「国権」「金紋会津」という日本酒ファンに知られる銘酒をつくる四つの蔵元がある。南会津町の議会も先月、乾杯条例を可決した。条例まで必要か、という考えもあると思うが罰則もない。地産地消を進めるための緩やかな申し合わせなのだろう
▼東日本大震災では多くの東北の蔵元が被災した。福島第一原発の事故による風評被害もある。苦闘は今も続く。東北の蔵元がはつらつと酒造りに励めるよう、飲んで応援してみたい。