中日春秋
2013年6月27日
まずは、江戸の小咄(こばなし)から。ある男が上野の弁天様をお参りした帰り、亀を売る商人に出会う。「亀は万年。間違いなく万年生きるのを一匹もらおう」と言う客に、商人は「これなら万年間違いなし」と請け負って渡す。ところが、この亀、明くる朝には死んでいた。男が文句を言いに行くと、商人はしれっと、「きのうがちょうど万年目」
▼かつて寺社や橋の辺りには、「放し亀」「放し鰻(うなぎ)」を商う者がいたという。飼うため、食べるためではない。買った客が池や川に放してやることで功徳(くどく)を積む「放生(ほうじょう)」である
▼殺生なしには生きられぬ身であることへの、せめてもの、小さな罪滅ぼし。ご先祖さまが常日ごろから大事にしていたそんな心掛けも、大量消費の世にかすんでしまったのだろう
▼生命力旺盛なニホンウナギも、今や絶滅危惧種だ。その鰻を守るために、浜名湖では、現代版「放し鰻」をする話が進んでいるという。湖で水揚げされた天然鰻から、産卵期に差しかかっているものをより分けてすべて買い取り、体力を回復させてから、海に放流するというアイデアだ
▼財源など詰めなくてはならないことも多いと聞くが、ニホンウナギを日本の河川に取り戻すため、うな丼をわが家の食卓に復活させるためにも、ぜひ実現させてほしい
▼平成の世が、鰻が死に絶える「ちょうど万年目」になってしまっては困る。
2013年6月27日
まずは、江戸の小咄(こばなし)から。ある男が上野の弁天様をお参りした帰り、亀を売る商人に出会う。「亀は万年。間違いなく万年生きるのを一匹もらおう」と言う客に、商人は「これなら万年間違いなし」と請け負って渡す。ところが、この亀、明くる朝には死んでいた。男が文句を言いに行くと、商人はしれっと、「きのうがちょうど万年目」
▼かつて寺社や橋の辺りには、「放し亀」「放し鰻(うなぎ)」を商う者がいたという。飼うため、食べるためではない。買った客が池や川に放してやることで功徳(くどく)を積む「放生(ほうじょう)」である
▼殺生なしには生きられぬ身であることへの、せめてもの、小さな罪滅ぼし。ご先祖さまが常日ごろから大事にしていたそんな心掛けも、大量消費の世にかすんでしまったのだろう
▼生命力旺盛なニホンウナギも、今や絶滅危惧種だ。その鰻を守るために、浜名湖では、現代版「放し鰻」をする話が進んでいるという。湖で水揚げされた天然鰻から、産卵期に差しかかっているものをより分けてすべて買い取り、体力を回復させてから、海に放流するというアイデアだ
▼財源など詰めなくてはならないことも多いと聞くが、ニホンウナギを日本の河川に取り戻すため、うな丼をわが家の食卓に復活させるためにも、ぜひ実現させてほしい
▼平成の世が、鰻が死に絶える「ちょうど万年目」になってしまっては困る。