中日春秋
2013年6月25日
 「金打」と書いて、「きんちょう」と読む。口約束ではあるが、破ることはないと誓い合う時、武士であれば刀を、女性であれば鏡を、打ち合わせる。いにしえの風習だ
▼もう随分前のことのように思えるが、昨年の十一月十四日、国会の党首討論で野田佳彦、安倍晋三両氏が衆院解散をめぐって激しく渡り合った。あの時、論戦の刃音がひとしきりした後で、金打の音も響いたと思ったのだが、空耳だったのか
▼念のため、国会の議事録を見た。野田氏が「定数削減は来年の通常国会で必ずやり遂げる…このご決断をいただくならば…解散をしてもいいと思っております。国民の前に約束してください」と安倍氏に迫った
▼安倍氏は切り返して言った。「来年の通常国会において…定数の削減と選挙制度の改正を行っていく…今この場で、そのことをしっかりとやっていく、約束しますよ」
▼よし、武士に二言はないな。では決戦の時-と行われた総選挙の一票の格差をめぐっては、各高裁で違憲判決が相次いだ。にもかかわらず、今国会で成立したのは、既に高裁が判決で「一時しのぎ」と批判している〇増五減の区割り見直し法案だけ。国会の抜本改革を棚上げにしての泥仕合が続いた
▼参院選に向け、聞き心地のいい「国民への約束」が打ち出されている。その金打の音は気のせいか、ひどく濁り、弱々しく聞こえる。