中日春秋
2013年5月25日
ロシア生まれのピアニスト、イリーナ・メジューエワさんがクラシック音楽の魅力を、こんなふうに語っていた。「作品を通して死んだ人と対話できる。同じ作品を何度弾いても、新しい発見が出てくる。奥行きの深い世界、豊かな世界、終わりのない世界…」
▼空襲で焼失した国宝・名古屋城本丸御殿の復元も、いにしえの名工らとの対話の積み重ねだ。残された実測図を基に、材料を吟味し、伝統工法で組み上げていく作業は、楽譜を読み込み、音の伽藍(がらん)を築く演奏家の姿に通ずる
▼御殿は狩野派絵師による絢爛(けんらん)豪華な障壁画で彩られていた。うち千面余は空襲を免れ重要文化財となったが、三百面ほどが焼け、今はガラス乾板の写真でしか残っていない
▼計千三百面すべての絵を、描かれた当時の鮮やかさで蘇(よみがえ)らせる復元模写の仕事も続く。現代の絵師らを率いる加藤純子さん(64)は、描いていると、先達が手を取って教えてくれているような気がするという
▼「絵師たちも、その美を記録した写真技師も、自分の持つ技を余すところなく出し切っている。欲を放り出して仕事をしている。その純粋さが伝わってくる。私たちの仕事は、そういう人たちの心を、心として受け止めるものなのです」
▼全体の三分の一が復元された御殿の一般公開が二十九日から始まる。蘇った四百年前の美は、過去と現代の対話の結実だ。
2013年5月25日
ロシア生まれのピアニスト、イリーナ・メジューエワさんがクラシック音楽の魅力を、こんなふうに語っていた。「作品を通して死んだ人と対話できる。同じ作品を何度弾いても、新しい発見が出てくる。奥行きの深い世界、豊かな世界、終わりのない世界…」
▼空襲で焼失した国宝・名古屋城本丸御殿の復元も、いにしえの名工らとの対話の積み重ねだ。残された実測図を基に、材料を吟味し、伝統工法で組み上げていく作業は、楽譜を読み込み、音の伽藍(がらん)を築く演奏家の姿に通ずる
▼御殿は狩野派絵師による絢爛(けんらん)豪華な障壁画で彩られていた。うち千面余は空襲を免れ重要文化財となったが、三百面ほどが焼け、今はガラス乾板の写真でしか残っていない
▼計千三百面すべての絵を、描かれた当時の鮮やかさで蘇(よみがえ)らせる復元模写の仕事も続く。現代の絵師らを率いる加藤純子さん(64)は、描いていると、先達が手を取って教えてくれているような気がするという
▼「絵師たちも、その美を記録した写真技師も、自分の持つ技を余すところなく出し切っている。欲を放り出して仕事をしている。その純粋さが伝わってくる。私たちの仕事は、そういう人たちの心を、心として受け止めるものなのです」
▼全体の三分の一が復元された御殿の一般公開が二十九日から始まる。蘇った四百年前の美は、過去と現代の対話の結実だ。