中日春秋
2013年5月24日
「これ以上ない気分です。でも、これ以上ないくらい疲れている」。世界の頂から届いた声が、この上ない充実感を伝えていた
▼三浦雄一郎さんが、八十歳でのエベレスト登頂を宣言したのは、昨年十月。それから二回の心臓手術を受けた。階段を少し上っただけで、息が切れた
▼そのわずか半年後に、標高八、八四八メートルにたどり着いた。お孫さんにおじいちゃんと呼ばれるのが嫌で、スキー競技のスーパーG(スーパー大回転)をもじって「スーパーじい」と呼ばせている三浦さんは、まさしく驚異の八十歳だ
▼その超人がどの冒険より恐怖を感じたのが、東日本大震災だという。東北は少年時代を過ごし、冒険の醍醐味(だいごみ)を教えてくれた地。『私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか』(小学館)に記した
▼自分が快挙を成し遂げても被災者には<何も響かないかもしれない。遠い世界の変わり者としか思われないかもしれない…すべての希望がなくなり、誰も復活できないような漆黒の闇から這(は)い上がること。それはエベレスト登頂よりも尊い>
▼三浦さんが登頂で伝えたいのは、広い意味での冒険だという。家で打ちひしがれている人が、ちょっと外に出てみる。きのうまで通ったことのない道を、歩いてみる。自分の世界を日々少しずつ広げてみる。<その先につながっている可能性は、何歳であろうと無限大>だと。
2013年5月24日
「これ以上ない気分です。でも、これ以上ないくらい疲れている」。世界の頂から届いた声が、この上ない充実感を伝えていた
▼三浦雄一郎さんが、八十歳でのエベレスト登頂を宣言したのは、昨年十月。それから二回の心臓手術を受けた。階段を少し上っただけで、息が切れた
▼そのわずか半年後に、標高八、八四八メートルにたどり着いた。お孫さんにおじいちゃんと呼ばれるのが嫌で、スキー競技のスーパーG(スーパー大回転)をもじって「スーパーじい」と呼ばせている三浦さんは、まさしく驚異の八十歳だ
▼その超人がどの冒険より恐怖を感じたのが、東日本大震災だという。東北は少年時代を過ごし、冒険の醍醐味(だいごみ)を教えてくれた地。『私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか』(小学館)に記した
▼自分が快挙を成し遂げても被災者には<何も響かないかもしれない。遠い世界の変わり者としか思われないかもしれない…すべての希望がなくなり、誰も復活できないような漆黒の闇から這(は)い上がること。それはエベレスト登頂よりも尊い>
▼三浦さんが登頂で伝えたいのは、広い意味での冒険だという。家で打ちひしがれている人が、ちょっと外に出てみる。きのうまで通ったことのない道を、歩いてみる。自分の世界を日々少しずつ広げてみる。<その先につながっている可能性は、何歳であろうと無限大>だと。