中日春秋
2013年4月25日
「尊」が、酒器だとは知らなかった。公爵や男爵の「爵(しゃく)」もまた酒器だという。「尊」は酒樽(さかだる)であり、「爵」は三本足とくちばしのような注ぎ口が特徴的な器。古代中国において、王から酒を賜ることは尊いことであり、それが爵位制度にもつながったらしい
▼きのうから名古屋市博物館で始まった「中国王朝の至宝」展で、今から三千数百年以上も前、殷(いん)の時代に青銅でつくられた尊や爵を見た。日ごろ使う漢字がまさにモノとしてそこに存在する。漢字に潜む古代の息遣いがふと、蘇(よみがえ)るような感覚を味わった
▼中国ではこのところ、すさまじい勢いで考古学調査が進んでいるという。例えば、今の四川省で独特の文化を花開かせた古代蜀(しょく)の実像を示す品々が大量に出土したのは、つい最近のことである
▼大陸の広さ、文明の深さ。特別展を担当する藤井康隆学芸員は「もう世紀の大発見はないだろうと思っていると、出てくる。未知の文明がまだ眠っているかもしれないのです」と話す
▼特別展の目玉の一つ「突目(とつもく)仮面」は、まさに目玉が飛び出た異形の面で、古代蜀の始祖・蚕叢(さんそう)の姿ともいわれる。蚕叢は常人とは違い、「縦目」を持っていたと伝わっている
▼「縦目」がどんなものかは謎だが、眼前にある状況だけでなく過去から未来へ「縦に見通す力」とすれば、今の日中関係に必要なのはまさしくそんな目だろう。
2013年4月25日
「尊」が、酒器だとは知らなかった。公爵や男爵の「爵(しゃく)」もまた酒器だという。「尊」は酒樽(さかだる)であり、「爵」は三本足とくちばしのような注ぎ口が特徴的な器。古代中国において、王から酒を賜ることは尊いことであり、それが爵位制度にもつながったらしい
▼きのうから名古屋市博物館で始まった「中国王朝の至宝」展で、今から三千数百年以上も前、殷(いん)の時代に青銅でつくられた尊や爵を見た。日ごろ使う漢字がまさにモノとしてそこに存在する。漢字に潜む古代の息遣いがふと、蘇(よみがえ)るような感覚を味わった
▼中国ではこのところ、すさまじい勢いで考古学調査が進んでいるという。例えば、今の四川省で独特の文化を花開かせた古代蜀(しょく)の実像を示す品々が大量に出土したのは、つい最近のことである
▼大陸の広さ、文明の深さ。特別展を担当する藤井康隆学芸員は「もう世紀の大発見はないだろうと思っていると、出てくる。未知の文明がまだ眠っているかもしれないのです」と話す
▼特別展の目玉の一つ「突目(とつもく)仮面」は、まさに目玉が飛び出た異形の面で、古代蜀の始祖・蚕叢(さんそう)の姿ともいわれる。蚕叢は常人とは違い、「縦目」を持っていたと伝わっている
▼「縦目」がどんなものかは謎だが、眼前にある状況だけでなく過去から未来へ「縦に見通す力」とすれば、今の日中関係に必要なのはまさしくそんな目だろう。