中日春秋
2013年2月14日
 紀元前七〇八年というから、今から二千七百年以上も前のことだ。古代オリンピックが始まって六十八年、新競技が加わった。レスリングである
▼その古代の大会を代表する名選手が、ミロだ。紀元前六世紀にレスリングの成人競技で五連覇。三連覇中の吉田沙保里選手らが、東京も開催地に立候補中の二〇二〇年大会まで連覇を続ければ、二千五百年来の偉業になる
▼だが、古代から五輪と共に歴史を重ねてきたレスリングの歩みに、国際オリンピック委員会(IOC)が黄信号を点(とも)した。五輪から外す構えなのだ。競技関係者ならずとも、「なぜ?」と首をかしげざるをえない
▼IOC幹部は「どうすればよりエキサイティングになるか(国際レスリング連盟は)説明すべきだ」と発言したらしいが、ロンドン五輪の中継で手に汗握った身からすれば「どこがエキサイティングじゃないのか?」と、「?」は重なるばかりだ
▼ペロテット著『驚異の古代オリンピック』によれば、古代の神聖な祭典はその実「金次第だった」という。ローマ皇帝ネロに買収された審判が「詩の朗読」を新種目にすることを承知したこともあったらしい
▼IOCがとにかく気にしているのは、テレビのようだ。古代の審判は皇帝の財力に額(ぬか)ずき、IOCは巨額の放映権料に額ずく。選手は金メダルを目指し、IOCはひたすら金を目指すのか。