中日春秋
2012年12月27日
 去年の音は、ポポポポ~ン。今年の音は、ロンドン五輪での日本選手の活躍を伝える実況放送だそうだ
▼補聴器の国内最大手リオンが実施した「心に残った音調査」の結果である。ポポポポ~ンは、震災後のテレビ広告自粛の中で延々流れ続けたACジャパンのコマーシャル。♪まほうのことばで たのしい なかまが ポポポポ~ン…というフレーズが耳に蘇(よみがえ)ってくる方も多かろう
▼調査結果を読んでいてハッとしたのは、「今年の音」の二位から四位だ。二位は金環日食の時の歓声やどよめき。三位は台風やゲリラ豪雨による暴風雨の音、そして四位が三月十一日午後二時四十六分、震災から一年たち、日本中が黙とうした時のあの静寂だ
▼人工的な音ではなく自然の音。時に美しく、時に残酷な大自然への畏怖の念に満ちた静けさ。その空間に広がる人々の驚きに満ちたどよめき、あるいは悲嘆のすすり泣き。人工音に満ちた今の日本で、多くの人が静けさの中に「心に残った音」を見出したのは、やはり震災を経験したからなのだろうか
▼ちなみに、今年の七位には衆院解散時の万歳三唱が入った。その国会できのう、安倍晋三氏が首相に指名され、与党議員の歓声が響いた
▼被災地には政治に絶望し「もう何を言っても」と口をつぐむ人も少なくない。そうした声ならぬ声に、謙虚に耳を傾ける政治であってほしい。