中日春秋
2012年12月5日
 生き物の中には、「たたく」ことで、生活の糧を得たり、自分たちの生命を守る動物がいる
▼啄木鳥ことキツツキや、赤啄木鳥ことアカゲラは名の通り、木の幹をくちばしでたたく。音や振動で驚いて出てきた虫をパクリ。ウサギは危険を察知すると、後ろ脚で地面をダンダンたたいて、仲間に知らせる
▼キツツキやウサギに顔向けできないような惨事が起きた。天井が崩落した中央自動車道の笹子トンネルでは、ハンマーなどで叩(たた)いて異常を調べる「打音検査」は実施されていなかったという。キツツキのようにたたいていれば、危険の虫が這(は)い出ていたのではないか。犠牲になった九人のご遺族は、唇を噛(か)む思いだろう
▼猛スピードで進む高齢化のように、公共設備の老朽化は、この国が抱える大きな問題だ。高度経済成長期に造られた建物や道路が、どんどん老いている
▼名古屋市を例にとれば、公共施設の維持改修のため、今後四十年間で二兆九千九百億円も必要だという。年平均で七百四十八億円。これは建物だけで、道や橋を含めると、年八百三十三億円も要する。日本全体では、今後五十年間に三百三十兆円、年八兆円必要という試算もある(根本祐二著『朽ちるインフラ』)
▼耳触りの良い「造る」話よりも、地道に「守る」話が大事な時代になった。笹子からの警鐘はそう教えてくれているのではないか。