中日春秋
2012年11月8日
 今ごろ、トナカイも、ほっと胸をなで下ろしているに違いない。米大統領選で、民主党のオバマ氏が再選を果たした
▼大接戦で過熱した非難の応酬。数多(あまた)ある毒舌の中でも、民主党幹部が共和党のロムニー氏を揶揄(やゆ)したひと言は痛烈だった。「ロムニーがサンタクロースなら、トナカイを解雇し、こびとたちの仕事も外部委託するだろう」
▼正社員を減らし、社内でやっていた仕事を安く請け負う会社へ委託する。安い労働力を求め生産を国外に移す。大富豪のロムニー氏は、日本でもすっかり定着した経営手法の右代表だ。職を失い窮地に陥っても、それは自己責任だと言う
▼いや、貧しい人でも医療や教育を受けられるようにして、中間所得層を増やすことこそ、国を豊かにする。そう主張したのが、オバマ氏だ。これこそ現代世界の対立軸、各国共通の論点である。闘いはオバマ氏の勝利に終わったが、論争が決着したわけではない。日本を含め各国で選挙のたび問われ続けるテーマだ
▼それにしても度肝を抜かれたのは、使われた選挙資金の膨大さだ。ある民間団体の推計では、六十億ドル(四千八百億円)にもなるという。米国の人口は三億一千万人で、その七人に一人が貧困層。六十億ドルとは、全米の貧しい人たち一人一人に一万円ほどの贈り物ができる額だ
▼サンタクロースもトナカイも、ため息しきりだろう。