中日春秋
2012年10月3日
一九六四年の十月は、輝かしい月だった。一日に東海道新幹線が開通し、十日には、東京五輪が開幕する。敗戦から復興の道を歩んできた日本にとって、まさに実りの秋だった
▼五輪の開幕式をテレビで見ながら「こういう記念になる年に初めての子が生まれたのだ」と、感慨に浸っていた若いお母さんの一人が、横田早紀江さんだ。名古屋の聖霊病院で生まれた長女は、カメラを向けるとわざと変な顔をしたり、ダジャレを言ったり、優しくて楽しく、強い少女に育った
▼その娘、めぐみさんが五日、四十八歳の誕生日を迎える。十三歳で北朝鮮に拉致されて、もう三十五年。父母の今の思いが近著『めぐみへの遺言』(幻冬舎)に記されている。<とにかく自由にしてやりたい。あんな国に閉じ込められたままで消えてもらいたくない。病気や野垂れ死にをしてほしくない>
▼<あの人が大好きだった広々とした野原で寝転がって青空を見たり風に当たったり、馬や牛や羊が遊んでいる緑の牧場のような所で思いっきり遊んで、これが自由なんだ!と思わせてやりたい>
▼早紀江さんは、七十六歳。夫の滋さんは来月、八十歳になる。やたらと夫妻と一緒に写真を撮りたがり、それを選挙運動に使うような議員。制裁の効果も検証しないで強硬策ばかり言う政治家
▼憤りをかみ殺しつつ、夫妻は、穏やかに訴え続けている。
2012年10月3日
一九六四年の十月は、輝かしい月だった。一日に東海道新幹線が開通し、十日には、東京五輪が開幕する。敗戦から復興の道を歩んできた日本にとって、まさに実りの秋だった
▼五輪の開幕式をテレビで見ながら「こういう記念になる年に初めての子が生まれたのだ」と、感慨に浸っていた若いお母さんの一人が、横田早紀江さんだ。名古屋の聖霊病院で生まれた長女は、カメラを向けるとわざと変な顔をしたり、ダジャレを言ったり、優しくて楽しく、強い少女に育った
▼その娘、めぐみさんが五日、四十八歳の誕生日を迎える。十三歳で北朝鮮に拉致されて、もう三十五年。父母の今の思いが近著『めぐみへの遺言』(幻冬舎)に記されている。<とにかく自由にしてやりたい。あんな国に閉じ込められたままで消えてもらいたくない。病気や野垂れ死にをしてほしくない>
▼<あの人が大好きだった広々とした野原で寝転がって青空を見たり風に当たったり、馬や牛や羊が遊んでいる緑の牧場のような所で思いっきり遊んで、これが自由なんだ!と思わせてやりたい>
▼早紀江さんは、七十六歳。夫の滋さんは来月、八十歳になる。やたらと夫妻と一緒に写真を撮りたがり、それを選挙運動に使うような議員。制裁の効果も検証しないで強硬策ばかり言う政治家
▼憤りをかみ殺しつつ、夫妻は、穏やかに訴え続けている。