中日春秋
2012年8月28日
 夜遅く、鈴を転がすようなエンマコオロギの音色を聞き、高橋元吉の詩『鳴く虫』を思い出した。<草かげの/鳴く虫たちの宝石工場/どの音もみんなあんなに冴(さ)えているから/虫たちはきっといっしんになって/それぞれちがったいろの宝石を磨いているのだろう>
▼暑さが収まる処暑を過ぎ、九月がそこまで来ているのに、連日の残暑にぐったりさせられる。それでも、日脚は短くなり、草陰の小さな演奏者たちも、宝石を磨くように美しい音色を奏で始めた
▼この夏、電力会社の「電気予報」を小まめにチェックしたが、ピーク時でも電力は余裕があった。節電効果も大きく、原発依存度が高い関西電力でも、数字上は他社の融通を受ければ、大飯原発の再稼働がなくても乗り切れた可能性がある
▼電力不足の脅しはもう通用しない。きのう、集計がまとまった二〇三〇年時点での原発依存度をめぐるパブリックコメント(意見公募)は、約七万六千八百件、87%が原発ゼロ案の支持だ。政府が誘導したかった15%案は、わずか1%にとどまった
▼ゼロ案を支持する意見には、同じ人物や組織が何度も意見を出した形跡や、人の文章を丸写しした内容はほとんどなく、自分の言葉で思いを伝えていたという
▼最も大事な命という宝石を大切に磨きたい。草の根からの奏でが、硬直した政治を今、揺り動かそうとしている。