中日春秋
2012年5月29日
 人間とは、ムシのいい生き物だ。矛盾しそうな二つのことを二つながらに望むということが少なくない
▼例えば、「好きなだけ食べたいが、痩せたい」「働きたくないが、給料はほしい」「政治家にはなりたいが、カネのことで世間にうるさく言われたくない」…。ほかの例は読者各位でお考えいただくとして、あるいはギリシャの人たちの思いにも当てはまるのかもしれないと思う
▼先の総選挙では、ユーロ圏の国々が支援の条件として求める緊縮策の実施を約束した連立政権を崩壊させ、緊縮策拒否の党を大躍進させた。だが、一方で国民の大半は「ユーロ圏残留」を望んでいるのだという。「緊縮策は拒否だが、ユーロ圏には残りたい」ではムシがよすぎると、欧州各国が言うのにも無理からぬ面がある
▼痩せたいなら、鯨飲馬食に走るのを我慢し、それができないなら、痩せる方をあきらめるほかないのだろう。ギリシャでは結局、連立協議成らず、来月十七日に再選挙となったが、さてどんな判断になるか
▼思えば、脱原発依存と私たちの電気の使い方にも似たことは言える。「電気は好きなだけ使いたいが、できるだけ早く原発なしで済む社会にしたい」では、やはりムシがよすぎるというもの
▼世論調査など見れば、幸い、わが国では、人々がどちらを我慢し、どちらをあきらめたくないかははっきりしている。