中日春秋
2012年5月22日
 何かつらいことがあったり、落ち込んだりした時、人は、うつむきがちになる。震災の年、多くの日本人が坂本九さんの『上を向いて歩こう』に励まされたのも、だからだろう
▼昨日の朝は<上を向いた>人がずいぶん大勢いたのではあるまいか。太平洋岸などの各地で金環日食が観測された。天候に阻まれた人には申し訳ないが、拙宅辺りでは、金環が近づくや急に雲が晴れ、無事、拝むことができた
▼石川達三は小説『金環蝕』でそれを、周りは金色に輝くが中の方は真っ黒だと、カネに汚れた政界にたとえたが、日食メガネ越しに見ればやはり、なかなかの神々しさ。これほど広い範囲で観測できるのは平安時代以来、などと聞くとありがたさも一入(ひとしお)である
▼折も折、今日は、タワーでは世界一の高さを誇る東京スカイツリーの開業。また、たくさんの人が巨塔を仰ぎ見ることになる。加えれば、先週末にも人々の目を天空高くへと惹(ひ)きつける吉報が。国産ロケットH2Aが初めて商業衛星打ち上げに成功した
▼まだまだ困難の中にあるわが国だ。人々をして<上を向かせる>出来事が続くのは、喜ばしい。「笑い」が体によいというのはもはや知られた知見だが、本物でなく「つくり笑い」でさえ脳は活性化するという。ならば、である
▼<上を向く>行動が人の気持ちまで上向かせるとしても、おかしくはあるまい。