中日春秋
2012年3月20日
 カキを食べるに適した時期を言うのに、当今は、西洋の風に倣って「rの付く月」ということが多い
▼英語の九月(September)から四月(April)までを指すわけだが、昔の日本には、別の言い方があった。期間はやや短めで、もっと簡潔に、<彼岸から彼岸まで>と。無論、秋の彼岸から翌年春の彼岸までという意味
▼今日は春分の日、彼岸の中日である。まだカキもいけるが、お彼岸に付き物の食べ物といえば、やはり団子や牡丹餅(ぼたもち)。牡丹餅の名は、ボタンの花に見立てたからだが、同じものをハギの花に見立て、萩の餅、略して、お萩ともいうのはご存じの通り
▼昔の人が、同じ餅を呼ぶに、春と秋の彼岸に合わせ、それぞれの時候の花にちなむ別の名をわざわざ用意したのだろうか。寡聞にして確かなことは知らぬが、もしそうなら、なかなか風雅な呼称である。もっとも、彼岸の主眼は牡丹餅を食べることではない
▼今日も各地の墓所には墓参の人の姿が多く見られよう。被災地では、津波や地震で墓石が流されたり倒されたりした被害も目立った。やっとそれを直し、震災後初めての彼岸参りをする人もあると聞けば、胸がしんとなる。<身命といふ語しみじみ彼岸過>風生
▼所によっては今日も雪。きっぱりと、「寒さも彼岸まで」とはいくまいが、春の光が日一日と増していくのは確かである。