中日春秋
2012年3月14日
 その気(け)はないはずだが、ただ「花粉症」と口にしたり、書いたりするだけで鼻がムズムズしだすのは、どんな脳の働きによるものだろう。今年も、そのシーズンが始まっている
▼これから五月ごろにかけて、つまり花粉症と重なるのが、黄砂の来る時期。三好達治は『牝鶏』という詩で、ニワトリの砂浴びから黄砂を連想し<ははあん 今年の春は この辺から始まるな>と歌うが、春の風物詩と呼ぶにはやっかいな現象だ
▼花粉症に似た症状を引き起こすこともあり、中国大陸由来の大気汚染物質を含むとも。無論、視界を悪くし、洗濯物なども汚す。もう「春分の日」ごろには襲来する年もあるからそろそろかもしれぬ
▼十年ほど前、特派員としてエジプトに暮らしたが、あそこにも毎春、吹き荒れる砂嵐があった。現地の言葉でハムシーン。その意は「五十」で、五十日間続くからともいうが、そこまでのことはない。ただ、やたら埃(ほこり)っぽくなるのには閉口した
▼そのエジプト出身の青年が昨日、大相撲春場所の前相撲デビュー戦を白星で飾った。アフリカからは初の角界入りで、しこ名は、ズバリ大砂嵐。イスラム教徒だけにラマダン(断食月)は辛(つら)かろうが、どうかハムシーンのように相手力士にやっかいがられる存在になってほしいものだ
▼当方も、ナイルの水を飲んだ者の端くれ、応援しないわけにはいかない。