中日春秋
2012年2月8日
ドイツの名指揮者フルトヴェングラーは、一九四二年の講演で、自分が率いていた楽団の音をウィーンフィルのそれに近づけようと、一計を案じた逸話を明かしている
▼同じ楽器を注文して使わせてみたのだ。だが、<その思惑は的外れ>に終わる。むしろ音は<ふだんよりも鈍く光沢のないもの>に。次の演奏会では元の楽器に戻さざるを得なかったという(『音と言葉』)
▼楽器の良しあしとはなかなか玄妙なものである。それでも、少し前、米紙ニューヨーク・タイムズが伝えていたパリ大学の研究者らによる実験結果には驚いた
▼ストラディバリウスやグァルネリといえば十八世紀に作られた「億」の値がつく名器。それと現代の高級ヴァイオリンを、国際コンテストに参加していた二十一人の演奏者に、目隠しして弾き比べてもらったら、現代のヴァイオリンの音の方がずっと高い評価を得たのだという
▼材料の木、塗装など、名器の音の秘密を探求する研究は多いが、「秘密があるとすれば人の心の中にだ」とパリ大の研究者。米国の有名コンサルタントの言葉を思い出す。<製品は工場で生産されるが、ブランドは人の頭と心の中でつくられる>
▼もっとも、これで「億」の名器が値崩れしたとも聞かぬ。こうとでもいうしかあるまい。ストラディバリウスが宝なのは、それがストラディバリウスだからだ、と。
2012年2月8日
ドイツの名指揮者フルトヴェングラーは、一九四二年の講演で、自分が率いていた楽団の音をウィーンフィルのそれに近づけようと、一計を案じた逸話を明かしている
▼同じ楽器を注文して使わせてみたのだ。だが、<その思惑は的外れ>に終わる。むしろ音は<ふだんよりも鈍く光沢のないもの>に。次の演奏会では元の楽器に戻さざるを得なかったという(『音と言葉』)
▼楽器の良しあしとはなかなか玄妙なものである。それでも、少し前、米紙ニューヨーク・タイムズが伝えていたパリ大学の研究者らによる実験結果には驚いた
▼ストラディバリウスやグァルネリといえば十八世紀に作られた「億」の値がつく名器。それと現代の高級ヴァイオリンを、国際コンテストに参加していた二十一人の演奏者に、目隠しして弾き比べてもらったら、現代のヴァイオリンの音の方がずっと高い評価を得たのだという
▼材料の木、塗装など、名器の音の秘密を探求する研究は多いが、「秘密があるとすれば人の心の中にだ」とパリ大の研究者。米国の有名コンサルタントの言葉を思い出す。<製品は工場で生産されるが、ブランドは人の頭と心の中でつくられる>
▼もっとも、これで「億」の名器が値崩れしたとも聞かぬ。こうとでもいうしかあるまい。ストラディバリウスが宝なのは、それがストラディバリウスだからだ、と。