中日春秋
2011年9月14日
 「私たちは、月へ行く選択をした」。ケネディ米大統領が、そう宣言した一九六二年の有名な演説は記録映像か何かで見た覚えがある。しびれたのは、なぜ挑戦するかを説く、その後の言葉。「それが容易だから、ではなく、それが困難だからだ」
▼困難な目標へのチャレンジが人を鼓舞するなら、逆境の時こそ、何かへの挑戦が必要だろう。今の日本がまさにそうだ。だからって、何もロケットを飛ばせというのではない
▼昨日、野田首相は所信表明演説で、定検中の原発は再稼働させる考えを示した上で「中長期的には原発依存度は可能な限り引き下げていく」と述べた。「脱」の方向性は、先の発言より一層あやふやになった印象だ
▼要は「電力不足で経済に打撃が生じる恐れがある以上、簡単に『脱原発』とは言えない」という立場だろう。確かに、経済への影響を回避しつつ、当面は、可能な限り非原発の既存電力や節電で、中長期的には再生エネルギー拡充などで原発の穴を埋めていくという道は簡単ではない
▼そう。だから、私たちは「月へ行く」などという必要はないのだ。原発のない社会へ「行く」。それが格好の、国を挙げての挑戦になる。「それが容易だから、ではなく、それが困難だから」こそ人々の気概を鼓舞するだろう
▼そして、アポロ11号は目的地に行った。私たちにも、行けぬはずはない。