中日春秋
2011年9月3日
 「人事」。ただこう書いただけでは、にわかに意味を解しかねる言葉だ
▼人に関する事柄、といえばみなそうだが、「人事不省」の人事は、人の意識というニュアンスだし、「人事を尽くして天命を待つ」という場合の人事は「人にできること」だ。「じんじ」でなく「ひとごと」と読めば、自分とは無関係な事柄ということになる
▼そして、たとえ「ひとごと」でも気になるのがもう一つの人事、集団内の人の処遇という意味の人事である。昨日、野田内閣が発足し、これから、わが国を引っ張るチームの人事が決まった
▼新首相の言う通りで「万人が納得する人事はない」だろうが、民主党の役員人事も含め小沢元代表一派の納得は得たようだ。財政再建やマニフェストの扱いなどの大問題で、野田さんとは主張相いれないはずだが、小沢さんも大層ご満悦と聞けば、結局は人事のため「融和、融和」と騒いでいただけだったのか、の疑念も湧く
▼いや、人事をてこに政策も同調させる腹か。だが、それを受容すれば野田政権は存在意義を失い、それこそ“人事不省”に陥ろう。前任者の「対決」でも野田流の「融和」でもうまくいかないとなれば、この党、もう分裂のほか手はない
▼何にせよ閣僚の人事は済んだ。今後、野田さんに望むのは、原発問題をはじめ、とにかく国民の思いを「ひとごと」としない姿勢である。