中日春秋
2011年6月7日
最近、久しぶりに音楽でも聴こうか、とCDを繰っていて、ある一枚で、手が止まった
▼ドビュッシーの交響詩『海』が入るE・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管演奏のCD。ジャケットに北斎の『神奈川沖浪裏』が使われている。元来、この曲は、作曲家が、その絵から着想を得たとされ、初版スコアの表紙にも使われていたという
▼愛聴盤であり、ほかでも見慣れている超のつく名画。なのに手が止まったのは、あの大波の描写に大津波のイメージが重なったからだ。無論、「3・11」以前にそんなことを思ったことはない
▼作家の川上弘美さんが最近、初期の短編『神様』を、福島の原発事故を暗示する<「あのこと」>以後の設定にして、書き直した『神様2011』を発表したことも思い起こす。大震災を境に起きた既存、既知のものへの見方、感じ方の変化。それをまるで経験していないという人は少なかろう
▼今回の政争を見れば、国会議員はそうでもないようだ。菅首相が退陣することになったことも含め、結局は、参院選で野党が勝って、衆参の「ねじれ」が生じた一年も前、即(すなわ)ち、大震災が起きるずっと前の政治状況に行き着くのだから
▼「3・11」「あのこと」を経ても彼らは何ら変わっていない…。そう思い知ったことが、この政争に国民が強い違和感を抱いた大きな理由の一つではあるまいか。
2011年6月7日
最近、久しぶりに音楽でも聴こうか、とCDを繰っていて、ある一枚で、手が止まった
▼ドビュッシーの交響詩『海』が入るE・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管演奏のCD。ジャケットに北斎の『神奈川沖浪裏』が使われている。元来、この曲は、作曲家が、その絵から着想を得たとされ、初版スコアの表紙にも使われていたという
▼愛聴盤であり、ほかでも見慣れている超のつく名画。なのに手が止まったのは、あの大波の描写に大津波のイメージが重なったからだ。無論、「3・11」以前にそんなことを思ったことはない
▼作家の川上弘美さんが最近、初期の短編『神様』を、福島の原発事故を暗示する<「あのこと」>以後の設定にして、書き直した『神様2011』を発表したことも思い起こす。大震災を境に起きた既存、既知のものへの見方、感じ方の変化。それをまるで経験していないという人は少なかろう
▼今回の政争を見れば、国会議員はそうでもないようだ。菅首相が退陣することになったことも含め、結局は、参院選で野党が勝って、衆参の「ねじれ」が生じた一年も前、即(すなわ)ち、大震災が起きるずっと前の政治状況に行き着くのだから
▼「3・11」「あのこと」を経ても彼らは何ら変わっていない…。そう思い知ったことが、この政争に国民が強い違和感を抱いた大きな理由の一つではあるまいか。