中日春秋
2011年2月13日
 エジプトではPはBの音で発音される。例えば、清涼飲料水のペプシ(PEPSI)は「ベブシ」だ。だからこそ、こんな小話(ノクタ)が成り立つ
▼米国訪問で時の大統領ブッシュ氏と会談、エジプトに戻ったムバラク大統領は、すぐ、側近に命じた。「国中のドアというドアに、わが名を張り出させろ。ブッシュのやつも、やらせていたからな」
▼ドアのPUSH(押す)を大統領の名(BUSH)だと思い込んだ愚かな専制者というわけ。こんなふうにムバラク氏を揶揄(やゆ)できるのは、長い間、大衆がひそひそ声で流布するノクタぐらいのものだった。だが、その体制は、大統領辞任でもう崩壊した
▼民衆の抗議が新時代の扉を「プッシュ」したのである。人々が渇望してきたものは多いが、一番求めているのは、自由にものを言える空気のはずだ。それを担保することこそ、新体制の最初の仕事であるべきだろう
▼ところで、ノクタなどジョークの類は、小欄の引用でもふだんの会話でもよく使うが「笑えない」と言われることが多い。選ぶジョークが悪いのだと思っていたが、エジプトの研究書『政治的ノクタ』(アーデル・ハムーダ著)によれば、違うらしい
▼<ノクタは、それを披露するのに才能のある人を必要とする。さもなければ、そのマジックは失われ、幸福感の代わりに退屈さをもたらしてしまう>…。