中日春秋
2010年12月28日
 レンコンは、今が旬だ。実際は根ではなく地下茎だが、「蓮根(はすね)掘る」は冬の季語。虚子にも<泥水の流れ込みつゝ蓮根掘る>の句がある
▼全国有数の産地である愛知県愛西市、旧立田村地区では例年十二月が収穫のピーク。もう年の瀬で<蓮根掘る>も一段落といったところだろうが、この時期に出荷が増えるのは、お節料理に使われ、需要が高まるからだ
▼田作りは豊作、黒豆は健康を意味するまめに通じるなど、お節の中身は縁起がいいものが好まれる。言うまでもなく、レンコンの場合は「見通しがきく」がセールスポイントだ
▼伝承によれば、その立田村が名産地になったのは、江戸・天保年間に村の寺の住職が近江から種を持ち帰ったのが由来とか。湿地や沼地が多く、古くは度々、水害に苦しんだ土地柄で、つくる物にも困っていたが、泥水の中で育つとあって栽培が広がったのだという
▼そういう苦難の中の人々も支えた、たくましい作物なのである。しかも先が見通せる。ちょうど今の困難で先行き不透明な時代、新年に食して縁起を担ぐなら、これほどふさわしいものもない気がする
▼西洋に<楽観主義者はドーナツを見、悲観主義者は穴を見る>といった人があるらしいが、レンコンの場合は逆だろう。お節では、大いに穴を見、その先に明るい一年を思い描いてから、おいしくいただきたいものである。