中日春秋
2010年12月22日
先のノーベル平和賞授賞式のそれとは違い、こちらは、うれしい“無人の椅子”だった
▼一月に食道がんの手術を受けた指揮者の小沢征爾さんが復活を印象づけた、過日の米国でのコンサート。初日のようすを伝えた記事によれば、体調を考慮して指揮台には椅子が用意されたが、ほとんど腰を下ろさず、ブラームスの交響曲を振り切った
▼その小沢さんが総監督を務めるのが毎夏、長野県松本市で開かれる音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」。桐朋学園創設者の一人で、小沢さんの師でもある音楽教育家斎藤秀雄にちなんだ名だが、来年、二十回の節目となるのを機に名称を変更し、新名称は公募案を参考に決めるという
▼「海外でも分かりやすい名に」という小沢さんの考えも分かる。だが、「サイトウ」の名には由緒がある。多くの弟子らの思いがあり十九回の歴史もある。変えるのは惜しい
▼式亭三馬『浮世床』には、猫に「強い名」を付けようと仲間内で考える話がある。まず虎の案が出るが、空を飛ぶから虎より上だというので、龍(りゅう)。だが、龍も雲なしでは格好がつかないから雲。以下、雲も風には飛ばされ、風も障子を閉(た)てたら吹き込めず、障子も鼠(ねずみ)には囓(かじ)られると続き、鼠より猫の方が強いとなって「やっぱり猫と呼ぶがいい」
▼こちらも「やっぱりサイトウと呼ぶがいい」とならぬものか。
2010年12月22日
先のノーベル平和賞授賞式のそれとは違い、こちらは、うれしい“無人の椅子”だった
▼一月に食道がんの手術を受けた指揮者の小沢征爾さんが復活を印象づけた、過日の米国でのコンサート。初日のようすを伝えた記事によれば、体調を考慮して指揮台には椅子が用意されたが、ほとんど腰を下ろさず、ブラームスの交響曲を振り切った
▼その小沢さんが総監督を務めるのが毎夏、長野県松本市で開かれる音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」。桐朋学園創設者の一人で、小沢さんの師でもある音楽教育家斎藤秀雄にちなんだ名だが、来年、二十回の節目となるのを機に名称を変更し、新名称は公募案を参考に決めるという
▼「海外でも分かりやすい名に」という小沢さんの考えも分かる。だが、「サイトウ」の名には由緒がある。多くの弟子らの思いがあり十九回の歴史もある。変えるのは惜しい
▼式亭三馬『浮世床』には、猫に「強い名」を付けようと仲間内で考える話がある。まず虎の案が出るが、空を飛ぶから虎より上だというので、龍(りゅう)。だが、龍も雲なしでは格好がつかないから雲。以下、雲も風には飛ばされ、風も障子を閉(た)てたら吹き込めず、障子も鼠(ねずみ)には囓(かじ)られると続き、鼠より猫の方が強いとなって「やっぱり猫と呼ぶがいい」
▼こちらも「やっぱりサイトウと呼ぶがいい」とならぬものか。