中日春秋
2010年11月17日
 童話の主人公ピノキオは、うそをつくと鼻が伸びるが、人間の場合も、ホルモンの作用で鼻が少し膨らむ、という研究結果をかつて新聞で読んだ覚えがある
▼相手に気づかれるほどではなくても、むずがゆくなるため手で触ったりして、内心の罪悪感があらわれることも多いらしい。そういえば、諺(ことわざ)にも<心内にあれば色外にあらわる>と。喜びでも怒りでも、内に秘めた思いが覚えず、仕草などに出ることは少なくない
▼昨日、裁判員裁判で初めての死刑判決が横浜地裁で出された。被害者の首を生きたまま電動ノコギリで切り、遺体をばらばらに切断…。身の毛もよだつような犯行に私たちと同じ市民が下した裁きである
▼異例だったのは、裁判長が被告に語った言葉だ。「控訴を勧めます」。ある法曹関係者は「判決に自信がないとの印象を持たれかねない」と首をかしげたが、確かに、「別の結論があるかもしれない」と言っているようにも聞こえる
▼評議の内容は秘密。だが、命を奪う刑罰の選択までに生半(なまなか)でない苦悩があったことは想像がつく。評議の秘密の「内」に秘められた、裁判員らの迷いや躊躇(ちゅうちょ)が「外」にあらわれた色。あるいは、それが「控訴の勧め」だったか
▼大津地裁では被告否認の殺人事件裁判も進行中。素人の目が状況証拠をどう判断するか。裁判員制度は、もう一つの大きな試練に直面する。